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「…───では、本日の議会は終了致します。各団長は選抜部隊の人選及び物資等の確認をお願いします。」 つい物思いに耽っていたら、いつの間にやら議会が終わってしまい。 「僕達も戻ろう。これから色々と準備があるからね。」 最近はチャラさも陰り、すっかり頼れるお兄さんに様変わりしたアシュが皆に声を掛け。オレも急いで立ち上がる。 「準備って、オレは何をすればいいのかな~?」 「ん-…セツはとりあえず着替えさえあれば、問題ないんじゃねぇか。」 「そっか、ならメイドさんに聞いた方が良いのかな…」 オレは戦闘要員じゃないし。 それでもなるべく動き易い服とか、旅に適した物を選んだ方が良いのかも…。 ちなみに余談だけど、オレの普段身に付けてる服は全て、アリシア様が直接見立ててくれてる物…らしい。 なんていうか…気のせいかもしんないけど、中性的な可愛いデザインばかりなんだよねぇ。 オレはあまり拘らない性格だし。その日着る服は、いつもルーが選んでくれたのをそのまま着てただけだし。 たまに短パンとかだと、年齢的にもさすがにアレかなぁ~と思う部分はあったけれど…。 異文化故の感覚の違いも然り…服ぐらいで我が儘言いたくはなかったからさ。 タダで至れり尽くせりな生活をさせてもらってる身なんだから、感謝しかないよね。 「それならセツの荷造りは、私が手伝おう。」 「いーの?自分のもしなきゃだし、大変じゃない?」 「私はさほど掛からないから、心配要らない。」 なら甘えちゃおっかな~。 騎士のルーなら遠征とかで慣れてるだろうから、任せても安心だし。いつもオレの服を選んでくれてるからね… 別に、ルーの好みで良いかな~とか…それはそれで下心もあったりするんだが。 「魔王城に近い町までは馬車で数日掛かるからね。身の回りの物とかも、頼んでおいた方が良いよ~。」 3日後に迫る遠征に備え、みんなで話しながら宮殿を後にして。 ちょうど庭園の前を通り掛かったところで、ロロが何かに気付いたよう話を中断する。と… 「ルーファス様、ごきげんよう~。」 そこには貴族のご令嬢様方が、いつにも増して溢れかえっており…。 その原因はまさに、 魔王討伐を聞き付けてのことなんだけど… 「ルーファス様が魔王城跡へと出立なさるとお聞きまして…」 居ても立ってもいられず、一目お会いしたかったと…彼女達はあれよあれよとルーを囲み。オレはやはり、蚊帳の外へと投げ出される。 気付けばアシュの所も同じようなことになり、ジーナはオレの隣で面倒そうに溜め息を漏らした。 「また始まったよ…今回はルーが魔王と直接対決すっからって、大騒ぎになってんのな~。」 「うん…。」 女子に囲まれたルーは、ちらりとオレを気にしてはくれるものの… 「魔族って、それは恐ろしい人種なのでしょう?神子の力も弱まり、各地で被害が相次いでいるとの噂もありますから…」 「結界の修復は順調に進んでいますし、騎士団も対応しているので問題はありません。」 「けれど魔族とルーファス様が戦うだなんて…私、心配で夜も眠れませんわ~。」 矢継ぎ早に話し掛けてくるご令嬢達を相手に、ルーも律儀に答えるものの…。その表情は硬く、愛想笑いすら繕いもしない…けど。 ここぞとばかりに彼女達はルーに詰め寄っていくもんだから…なんか、落ち着かない。

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