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「さあ戻ろう、セツ。」 「うん…」 手を差し出され、遠慮なく繋いで指を絡める。 ちょっと浮かれ気味に、茂みから帰る道へと戻ると… 「あ~セツ!ヒドイよ~ボクらを置いてくなんて~!」 宮殿の方からやってきたロロ達と、ばったり再会して。 「ふふ、そんなところでふたりして…一体何をしていたのかな?」 「ちがっ…」 …わないので、ついつい真に受け赤面赤してしまい。アシュは笑いを堪えて口元を隠す。 「てかさっきのセツ、思い切ったことしてたなぁ~。」 「ヤキモチ妬くセツ、メチャクチャ可愛かったもんね~ジーナ?」 あれだけ騒いでたら、そりゃ近くにいたみんなにも当然見られていたわけで。 何より年下ふたりに弄られるのは、正直居たたまれない。なのに、 「確かに、可愛いかったな…」 「なっ…なに言ってんの、お前まで…」 更にルーがトドメを刺してくるから。 思わず振り返れば、ルーは思い出すかのよう口元を押さえ赤くなっていた。 どうやらオレに味方はいないらしい…。 「ルーの返しも最高だったね~!」 オレ達が去った後、現場は暫く凍り付いていたらしいのだが… 『な…なんなのよ~私が当て馬とか信じらんない~っ!』 ルーに最も迫っていた令嬢だけは憤慨し、早々に立ち去ったそうで。残されたコ達も、それを皮切りにざわめき始めたものも… 『神子様って、殿方…でしたわよね?華奢でお綺麗な方とは、思ってましたけれど…』 『ルーファス様と神子様って、ご関係ですの…?』 …まああれだけ啖呵切って『ルーはオレのモノ』発言しちゃったし。 ルーも堂々とキスして、恋人宣言してたんだから…バレる以前の問題だよね。 「ああ~…ってことは、オレは大勢の女の子達を敵に回しちゃったのか…」 貴族のご令嬢って、虐めとか凄そうだよね…と色々想像しては、項垂れていると。 「その心配は無いんじゃないかな~。」 ロロがあっけらかんとして告げれば、ジーナもウンウンと頷いて。訝しげに首を捻っていたら… 「ふふ…寧ろセツの味方、増えてると思うよ。」 「え、なんで…?」 だって、と勿体ぶるアシュは、なんとも楽しそうに苦笑し。 『私、セツ様なら…受け入れられるかも…』 『私もですわ!なんていうか、こう…?』 “美しき青年神子を恋慕う、美麗守護騎士との禁断の───” 『そうですわ!!皆さんも漸く、その境地に至られたのですね!』 何故かそこで、物陰から颯爽と現わる…フェレスティナの女王アリシア様。 『はぁ…何かに導かれ、こうして馳せ参じてみれば…嗚呼!私もう何も思い残すことはございませんわ~!』 『いえ陛下、まだやるべきことが山ほどあるではありませんか。』 こっそり脱け出したアリシア様に厳しくツッコめるのは、勿論ヴィンしかおらず。 といっても、アリシア様の耳には全く届いていないのだが… 『さあさあ皆様、セツ殿と騎士ルーファスの行く末を温かく見守るご覚悟が整いましたら…是非とも私が主宰します茶会にて、熱く語らいましょう!』 往来で謎の大演説をかます女王様に。乙女達の瞳は、キラキラと輝いて… もうそのまま朝まで、語り合うような勢いではあったものの。 『そのようなお戯れは、魔王討伐が完了してからにして下さい。』 『まあ、ヴィンたら…またそのような野暮ったい事を。』 そこはヴィンが頑なに無表情を貫いて。 女王様も渋々ながら、嵐のように宮殿へと戻っていったんだそうな。

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