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ep. 25 麗しの神子は誰のもの?①
「いらっしゃい、オリバーさん。」
「セツ殿、本日よりお世話になります。」
翌日の午後、
騎士団の引き継ぎを終えたオリバーさんが、屋敷を訪れて。
「そんなに畏まらないで下さいよ。これから暫くは、一緒に過ごすんですから。」
「ああ…そうですね、申し訳ない…どうも慣れなくて…」
魔王ジークの主力隊として参戦するために。
束の間だけど、オリバーさんもここで生活することになり。
これについては、ヴィンの発案なのだけど…魔族と戦うにあたって作戦を立てたり、チームワークとかも重要になるだろうからと。
少しでも親睦を深められたらってコトなのだそう。
「ルー達は庭で稽古中なので…みんな、動いてないと落ち着かないみたいです。」
出発も近いんだから、逆に身体を休めた方が良いんじゃないかって思うけどね。
特にルーは一番重要な役割を担っているからか、いつになく真剣に打ち込んでる気がする。
「そうですか…ならば私も後ほど、合流させてもらおうかな…」
「是非そうして下さい、きっとみんなも喜びますよ!」
こっちですとオリバーさんの腕を引き、2階へと上がる。
「オリバーさんの部屋は奥の…オレの隣の部屋が空いてるみたいなので。」
「えっ…」
移動がてら説明すると、一瞬目を丸くしたオリバーさんだが。
オレが首を傾げれば、「いえっ、何でも…」と。照れ臭そうに言葉を濁していた。
「荷造りは、もう済まされましたか?」
「はい…といっても遠征とか初めてだから、オレだと要領が判らなくて。殆どルーやメイドさんに任せちゃったんですけどね~。」
部屋まで案内し、既に運ばれていた荷物だとか食堂の場所なんかをざっくりと説明していく。
とはいえ明後日には出発だから、あまりのんびりも出来ないだろうけど。
オリバーさんという心強い仲間が、一時的にも増えたのは嬉しい限りだよね。
「オリバーさんも、騎士団のお仕事とか忙しいのに…大丈夫でしたか?」
「そこは全く…むしろ一時ではありますが、団長職を離れるので、私としては気が楽になりましたね。」
こういう人が上司だと、部下も率先して働いてくれるだろうし…信頼関係も厚いんだろうなぁ。
前に会った騎士さん達とも気兼ねなく、仲良さそうだったし。現実世界で就職活動してた身としては、余計に憧れちゃうもんね。
「守護騎士ではない私が急に入ってきては、皆も少々遣りづらいやもしれませんが…」
はは…と苦笑するオリバーさんの長身を見上げる。
彼は団長だから、もしかしたらルー達に気を遣わせてしまうかもって…思っているのかな?
只でさえ最近のルーは、オリバーさんに対する反応が微妙だし。オレが気付くくらいだから、オリバーさんもきっと勘づいているんじゃないだろうか。
「…オレは余所者だから、守護騎士がどれだけすごいのかなんて、ちゃんとは理解してないんですけど…」
選ばれたルー達の実力は勿論知ってる。でもね…
「守護騎士だとかは…関係無いと思いますよ?ルー達もオリバーさんも、それから騎士団の人達も。みんなオレ…神子のために命懸けで戦ってくれてるから。」
「私は神子に関係無く、セツ殿だからこそっ…」
「ほら、そういうコトでしょ?」
オレがにこりと笑うと、オリバーさんもはっとして表情を和らげる。
「セツ殿…」
「みんな想いは、変わらないじゃないですか…って…すみません、オレなんかが偉そうに…」
年上の、しかもみんなの憧れる騎士団長に向かって、何説教臭いことを言ってんだと…慌てて頭を下げれば。
「いえ…とても、救われます。」
オリバーさんほどの実力者であっても、守護騎士への葛藤だとか、色々思うところがあるのだろうけれど。
彼がこうして笑ってくれるなら。言って良かったのかな…と思えた。
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