276 / 423
②
「そうだ、オレ今からルー達の様子を見に行こうと思うんですけど…」
オリバーさんは来たばかりで、荷解きとかあるだろうから…と、一応声を掛けたら。
「ならば是非、私もご一緒させて下さい。」
そう応えたので、オレはにっこり返してオリバーさんの腕を取り歩き出す。
「じゃあ早速行きましょ!ジーナとか、オリバーさんが来るって聞いて、スッゴク喜んでたんですよ~。」
「あっ…はいっ…!」
またオリバーさんは、困ったような照れたような顔をしたけれど。気にせずオレは、そのままオリバーさんを庭園へと連れ出した。
「お、やってるなぁ~。」
テラスから庭園へと向かうと、演習用に誂えた広場では、守護騎士4人が木剣を手に汗を流しており。アシュも珍しく率先して、身体を動かしている。
残念ながらヴィンだけは、魔族討伐の準備や打ち合わせにと裏方業に奔走中なので。宮殿を行ったり来たりと、忙しなくしていた。
「おーい、オリバーさん連れて来たよ~!」
手を振ると、みんなも気付き足早に此方へとやって来て。
「お疲れ様ですっ、オリバー団長!」
ジーナが一番に挨拶し、
ルー達も揃って丁寧に一礼する。と、
「そう硬くならずとも…今は団長として来ているわけではないから。」
「ですけどっ…」
気楽に接してくれと、オリバーさんは気さくに微笑み掛ける。それでもジーナはやっぱり失礼だからと、多少抵抗を見せたけれど…
「オリバーさんがそういうのなら、僕はお言葉に甘えちゃおうかな。」
さすが守護騎士最年長のアシュが空気を読んで、そう申し出てくれた。
こういう時、ホント頼りになるよね。
普段はわざとチャラチャラしてて、勿体ないからさ…いつもこんな感じならいいのになぁ。
「お前達が稽古に励んでいると聞いてな…良ければ私も、加えては貰えないだろうか?」
「マジっすか!?俺、オリバーさんに稽古付けてもらうの夢だったんスよ!」
いつになく子どもっぽく目を輝かせるジーナに、つい笑みが溢れる。
「そうだ、私もルーファスと一度、手合わせ願いたいと思っていたのだが…」
「私に、ですか…?」
静かに成り行きを見守っていたルーが名指しされ、面食らったよう瞬きし。
「ああ。お互い魔族から指名を受けた者同士だしな…騎士の中でも猛将名高いお前とは、常々剣を交えてみたいと思っていたところだから…」
どうだろう?と持ち掛けられ、暫し考え込むルーファスだったが…
「…是非、私からもお願いします。」
そう応え、差し出された手を握り返した。
ともだちにシェアしよう!