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「どっちが勝つかなぁ~。」 練習用の鉄製の剣を手に対峙するふたりから、離れた場所で見守る中。 ロロがウキウキとしながら、そう独り言のように告げると。ジーナがすかさず反応して答える。 「ルーも相当強いけどなぁ~、俺はやっぱオリバーさんかなぁ。」 魔法ありの実戦的な勝負なら、また違ってくるだろうけど。純粋な剣の腕となれば───…と、ジーナは熱く分析してみせる。 オリバーさんが直々にルーを指名した時は、すっごく羨ましそうだったからね。 ジーナはホント良い意味で格闘オタクっていうか… なんだかんだ、ふたりの試合を純粋に楽しんでいるように見えた。 「所属も違ったし…なかなか見られない対戦だからねぇ。どちらにせよ、良いものが見られると思うよ。」 心なしかアシュも楽しそう。 普段は表に出さないけど、アシュもやっぱり騎士のはしくれっていうか。そういうとこはジーナと同類なんだろうな。 (あー…なんかオレまで緊張してきた…) いつもルーがジーナ達と行ってるような、和やかな雰囲気とは一変して。緊迫した空気を漂わせる、ルーとオリバーさん。 特級騎士同士…しかも中でもトップクラスを誇るふたりの戦いは、初めて目にするわけだから。 何故だか妙に胸がざわついて、落ち着かない。 「いざ…」 ふたりが剣を構える。 すぐには動かず、互いに機を見定めるよう、微動だにせず対峙する。 そんなふたりの間を、一際強い風が通り抜けて… 「おっ、動いた…」 ジーナが声を発したと同時に、ふたりは地面を蹴っていて。オレはびくりと肩を揺らす。 言われなければ、反応すら儘ならないタイミングだったから…。オレは息吐く間も忘れて、ぎゅっと汗ばむ手を握り締めた。 「さすがだな…」 「オリバー殿こそ…」 ガチャンッと刃と刃が鍔競り合い、剣が弾かれた勢いのまま後方へと飛んで距離を取るルーファス。 たった一撃交わしただけで力量を読み合う彼らは、無意識にも笑みを浮かべている。 「大丈夫、かな…」 いつもは木剣だったけど、今はより実戦向けの重い鉄製の剣を使ってて。切れ味はほぼ無いから、比較的安全だとは聞いてるんだけど…。 素人目には違いが解らず、オレはつい不安を溢す。 「ん-多少怪我はすっかもだけど。あのふたりだし、平気だろ。」 何かあったらセツが治してやればって、ジーナは笑い飛ばすんだけど。そういう問題じゃあない気がする…。 「…始まったね。」 アシュの声にルー達に視線を戻す。 今度は打って変わり、互い連続して剣を繰り出す。 どちらの一撃も、照らし合わせたかのよう防ぎ合い…鈍い金属音が、広い庭園に広がっては共鳴し霧散した。 そんな攻防が暫く続けられると、ふたりの呼吸も弾み、次第に荒く乱れていく。 「更に腕を上げたんじゃないか…」 額に汗を滲ませるオリバーさんを、ルーはじっと見返して。 「これ以上、セツを危険な目には合わせたくないので…」 真剣に応えるルーの台詞が、途切れ途切れにも届き。胸が高鳴る。 「…私も、同感だ。」 告げるオリバーさんは、何処か別の何かに想いを馳せるかのよう視線を僅かに外して。 その姿に、ルーは何を思ったのか…微かに反応見せては口を開いた。 「オリバー殿、貴殿は─────」 その先は声が小さくて、 オレには聞き取れなかったのだけれど。 「私は……を……てる…」 答えるオリバーさんの声もまた、ルーにのみ届くほどのもので。 何を話しているかまでは判らないのだが… 「あ──…やっぱそうだよなぁ…」 代わりに、ジーナは納得したよう呟く。 「だね…僕達だって同じ穴の狢だものね。」 アシュ達には、ふたりの会話が聞こえているのか… ジーナと目を合わせると、苦笑を浮かべてしまう。 「え、ルー達はなんて言ってんの…?」 気になるから教えて欲しかったのに。 ロロはなんともバツが悪そうに、目を泳がせて。 「さすがに、ボクの口からは言えないかなぁ…」 「そうだね、オリバー隊長個人の問題だし…」 言葉を濁すロロを養護するように。 アシュもごめんねと、オレに苦笑った。

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