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④
「俺は…」
オリバーさんの返答を聞き、表情を強ばらせるルーは…なんとも感情的な声音を漏らす。
「すまない…」
謝罪を口にするオリバーさんもまた、譲れない何かがあるのか…強く挑戦的な色を、その瞳に宿しているみたいだった。
「あっ…!」
瞬間、ルーが駆け出し…オリバーさんも次いで追うよう走る。
何度か剣を交えた後、距離を取ったかと思えば、ルーが高く飛び頭上から剣を振り下ろすと…
「っ…!」
刃はギリギリ、身体には一切触れてなかったはずなのに。オリバーさんの頬には亀裂が走り…そこから鮮血が飛び散った。
すぐさま仕返して打ち放たれた、オリバーさんの一閃も同様に。ルーの腕を掠め…じわりと赤く袖を、滲ませている。
(なん、だろ…)
最初は普通に、先輩後輩の手合わせって雰囲気だったのに。
今のふたりは、やけに好戦的というか…まるで喧嘩でも始まったような不穏な空気を醸し出していて。
オレは胸騒ぎを覚え…
ざわついたそこを、ぎゅっと押さえつける。
「ありゃマジになってんな…」
ぼそりと呟くジーナ。
そう…これはもう、単なる稽古だとか生易しいものではなくなってて…。
現にふたりの剣からは、殺気…とは違うけれど。
魔力に似た闘気のようなモノが放たれているから…
(どうして…)
ルーもオリバーさんも、ここ最近は互いを妙に意識してるっていうか…。それはルーが、彼をライバル視してたから…だとは思うんだけど。
オレはなんだかこの状況が、無性に悲しくて仕方ない。
だって同じ騎士で、同じ夢を抱いてて。
神子…ううん、オレのためにって、体を張ってまで守ろうとしてくれているふたりなのに、さ…。
オレはルーが好きだし、オリバーさんも人としてとても尊敬してるから…こんなことは望んでないのに。
みんなとオリバーさんなら…すぐに打ち解けられると思ってたんだ。
なのに最もそうあって欲しいふたりが、
まるで敵同士みたいな顔して、剣を握っているから…
(やめてよ…)
怖い。
単純に剣と剣がぶつかる音が、戦いへの恐怖心を煽る。こうしてる間にも、ルーとオリバーさんの体には幾つもの傷が刻まれていくから。
もう見てられなくて。
オレは無意識に、地面へと視線を落とす。
そしたら…
「……ジーナ。」
「はいよ。」
オレの異変に気付くアシュが、一歩前に出て。
呼ばれたジーナもすぐに応じ続く。
「あっ…」
ふたりがオレから離れた気配に弾かれ、見上げると。ロロがすかさず大丈夫だよって…笑ってオレの肩を擦ってくれるから。
「スト───ップ!!悪いけど邪魔するぜ。」
「少し冷静になろうか、おふたりさん。」
ジーナがルーの前に、アシュはオリバーさんの間に入り…目配せで、オレの方を示す。
するとルーとオリバーさんもこちらを振り返り…
途端に驚いたように、ふたりはぴしりと固まってしまった。
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