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ep. 26 いざ魔王城へ!①

「う~ん…?」 「どうしたセツ、何か問題でもあったか?」 いよいよ出発の時を迎え、神子屋敷は日の出前から慌ただしく仕度に追われており。 オレもいつものように、ルーが用意してくれた服に袖を通していたのだけど…。 「陛下がこの日のためにと、特別に誂えて下さったのだが…寸法が合わなかったか?」 「いや、そこは不気味なくらいピッタリなんだけどさ~…」 姿見の前でくるくるしながら唸っていると、ルーも下から上までじっくりと観察してきて。 「良く似合っていると思うが。」 可愛いって誉めてくれるのは良いんだが、 そういうことじゃなくてだな… 「前々から、思ってはいたんだけどさ~…それにしても今回の服は、だいぶ可愛過ぎやしないか?」 そう。魔王討伐の話が浮上した後、女王様が遠征に必要だろうと、新たに服を新調して下さって。 それはとてもありがたいこと、なんだが。 いやね…あからさまドレスだとか、女性物だというわけじゃあない。 ないのだが… 「いくら神子でもオレ男だし、さすがにこの格好は…キツイだろ?」 若く見られるけど、オレもう21だしね? なのに上着は、女の子が着てるオフショルダーっていうのかな?…肩がまあまあ出てるやつで。 インナーには黒地のピッチリした、ハイネックの袖が無いものを着用し。 何より下はスパッツ的なもんを履いてはいるものの、がっつりショートパンツだし…。 いくら衣服に無頓着なオレでも、こればかりはちょっと心配になってくるんだけど…。 なのにルーの頭の中は、お花畑のようで。 「そうか?私は好きだが…」 「ちょ…チューしてる場合じゃないだろっ…」 可愛い可愛いと連呼して、満足そうに微笑むコイツは。ちゅっちゅっとほっぺにキスしてくる始末。 ダメだ…ルーなんかに聞いてたら埒が明かない。 ところが… 「もう仕度おわ───あわわ…セツ、かーわいいっ!」 「おっ、こりゃまたルーの趣味全開なカッコにされたもんだなぁ…。」 ドタバタと部屋に入って来たロロが、開口一番ルーと同じことを言い出して。続くジーナは呆れたようにしながらも、どこか恥ずかしそうに苦笑を浮かべていた。 「セツの着る服って、可愛いデザインの物が多いよね~。」 「え、そうなの?こっちの世界じゃ、男でもコレが普通なんだと思ってたのに…」 「いやいや…俺やロロでもそんなのまず着ねぇし。…まあロロなら、似合わないこともないとは思うけど。」 なんとなく普段着も部屋着も、甘めでダボっとしたのとかが多い気はしてたんが。 そこまで服にこだわりがなかったもんだから。 ルーが用意してくれてたのを、何の疑いもなく着てたんだよね~…。

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