285 / 423
②
「セツの服は、女王陛下自らが見立てた物なのですよ、ジーナ。」
そう説明するのは、アシュと共にやって来たヴィンであり。
だからだよね、オレの服がかなり個性的なのって。
舞踏会では男のオレに、本気でドレスを着せようって考えるくらいだから…まあ、納得である。
「…と言っても、あくまでセツに着せる服を選んでいるのはルーなのですが。」
「へぇ~…なかなか良いセンスしてるんだねぇ、ルーファス。」
一言多いヴィンに、アシュも乗っかって口笛を吹く。
そうすれば、ロロはまた可愛い可愛いと騒ぎ出して。ルーまで一緒になり、ウンウン頷く始末。
「セツもなんだかんだ、文句言わず着てるよなぁ~?」
ジーナに至っては、からかってくるけど。
お、オレは別にっ…
「元々拘らない性分なんだよ!それに、タダで養って貰ってるんだからさ~…」
知らない世界で、衣食住にありつけるだけでもありがたいことだし。服なんて着られれば問題無いだろ?
それに、
(ルーが、選んでくれてるんだし…)
ルーが朝起こしに来て、選んでくれた服を身に付けて…そういうのってなんか嬉しいだろ?
…って、どんだけ乙女思考なんだか…。
「そだっ…カツラもあったんだった~!」
変なスイッチが入り掛け、慌てて話題を反らす。
今回は正式に神子として騎士団と共に行動するから、あまり必要性はないかもだけど。
町の中等を歩く時には、あった方が便利だろうと。アリシア様が気を遣ってくれたんだよね。
「どお?変じゃない?」
銀色で、自身の髪より少し長めのカツラを着けて見せると。ルー達から一斉に凝視されて。
「やっぱり純日本人の顔に、銀髪は似合わないか~…」
「いや、とても似合っている…が、」
誰も反応してくれないから、恥ずかしくなって外そうとすると…ルーが慌てて口を開く。
しかし微妙に言葉を濁して、
「私は、セツの黒髪が好きだから。」
「ッ…!」
「あ───~…まぁた始まったよ…。」
とすっとオレの胸を射抜く衝撃告白に、ジーナがすかさずツッコミを入れる。
「っ…と、とりあえずっ…コレは、荷物に入れておこっかな~…」
またみんなに弄られるのも嫌なので、いそいそとカツラを外して荷物へと押し込む。
…別に黒髪のが良いって言われたから、外したんじゃあない。…決して。
「荷物の積み込みはお任せして、私達も参りましょう。」
オリバー隊長は先に行ってますよとヴィンに促され。オレ達も急いで集合場所へと向かった。
ともだちにシェアしよう!