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「では各自持ち場に付き、早急に準備を進めよ!最終確認後、直ちに出発とする!」 騎士団の指揮を執る第二支団長の号令で、皆散り散りに戻って行き。オレ達も用意された馬車へと向かう。 「セツの馬車にはルーとロロ、ジーナが共に乗車し…我々は後続の馬車に乗りましょう。」 「了解した。セツ殿、ではまた。」 「セツと別々なのは残念だけれど、ここは潔く譲っておくよ~。」 ヴィンの指示に従い、オリバーさんとアシュはオレにひと言告げて乗車して行く。 「セツ、手を。」 「あ、うんっ…ありがと。」 こうしてエスコートされるのにも随分慣れてきたけど、まだ少し恥ずかしさはあって。 照れながらも手を差し出せば、先に馬車へと乗り込んでいた年少組にニヤニヤされてしまった。 …が、何か言われる前に目を反らして遣り過ごす。 「あ、動き出したね。」 団長の合図で、騎馬隊が先陣を切って進行し始め。 オレ達が乗る馬車、荷馬車…最後尾にまた騎馬隊にと、続いていく。 「意外と人が多いんだなぁ…」 宮殿を抜け、城下に差し掛かると… 早朝にも関わらず、噂を聞き付けた人々が遠征部隊を一目見ようと大通りの端に募っており。 小さな子どもまでもが大人に混ざり、目を輝かせながら騎馬隊へと手を振る様子が、馬車からも伺えた。 「セツ~!!」 「あ…ティコだ!」 その中に、見知った子ども達の姿を認め。 オレは車窓から顔を出し、大きく手を振り返す。 「待ってるからっ!必ず無事で帰って来てね~!!」 「うん!行って来る~!」 応えれば、ティコ達は見えなくなるまでずっと手を振り続けてくれて。不安だった心に、じんわりと染みて温かくなる。 ティコ達のためにも、絶対にやり遂げなきゃ… オレは改めて気を引き締め、内で固く誓いを立てた。 「こっち側は平地って感じだね。」 城門を潜ってから隊は少しずつ速度を上げ、一路東方へと街道を突き進む。 フェレスティナの南に位置する神淵の森方面は、丘陵や森林が多かったけど。目の前の景色は、平坦な麦畑の連なる道が長閑(のどか)に続いていた。 魔王城跡から一番近い街には、大きな港があるそうで。漁業や流通が盛んなため、街道の補整もある程度進んでおり。道程は比較的安全だと聞いている。 途中小さな町や集落もあるらしいけど… 討伐隊は少数編成でありながら、それでも100人以上はいるそうなので。補給等で立ち寄りはするものの、基本的には夜営をするんだそうな。 まあ、いきなりこの大所帯を泊められる場所なんて。 そうそうないだろうからね…。

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