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⑥
「セツにとっては、初めての遠出になるな。」
「うん。だからちょっと楽しみでもあるんだよね~。」
不謹慎だけど、郊外に出たのって神淵の森と孤児院だけだったからね。フェレスティナ以外の街も初めてだから、何気にワクワクしてたり。
それが顔に駄々漏れだったようで…
隣に座るルーファスは、くすりと笑って頭を撫でてくる。
「私も楽しみだ。」
セツと一緒だから、と。
ルーはオレに合わせ無邪気に笑う。
それこそオレもだよって言いたかったけど…目の前にはロロとジーナがいるので。
またノロケだなんだと、弄られたくないから。そこはぐっと堪えておいた。
「しっかし馬車で移動とか退屈だよなぁ~。俺も馬が良かったな~…」
今回は時間が限られているので。騎士団は騎馬に乗り、オレ達は馬車に乗って移動している。
ジーナは騎馬の方が、性に合ってるんだろうけど。
守護騎士故に、神子の傍にいなければならないので…こうして馬車に乗ってるんだが。
一時間も経たない内から、欠伸や背伸びをしては退屈だなんだとぼやいていた。
確かに暇ではあるけども…快適に連れて行って貰えるだけでもありがたいと思わなくちゃ。
騎馬といえば、ジーナの後ろに乗った時は散々な目に合ったからね。
ルーと一緒なら、それも悪くないかなぁ~…なんてことは。少しだけ思ったりもした。
「街道沿いじゃあ、魔物もあんまり襲ってこないからね~。」
若いふたりは体力が有り余っているのか、ロロも随分と物騒なことを口走るし…。
オレとしては穏便に、何事も無く進んで欲しいところなんだけどなぁ。年少組は早くも飽きてきたのか、不満そうにするけれど。
「お前達は守護騎士だろう?いつ何時、セツに危険が及ぶかも判らないのだから。」
気を抜くんじゃないと、ルーが静かに諌めると…
ふたりはバツが悪そうにしながらも、素直にごめんなさいと頭を下げた。
「まあまあ、そんな堅苦しくしてても疲れちゃうからさ。」
気楽にいこうよと、場を和ませようと口を挟む。
「だが…」
魔族は油断ならないからと、渋い顔をするルー。
そりゃ魔族には、今まで散々な目に合わされてきたから。その気持ちも解らなくはないけど。
「魔物は仕方ないけど、魔族…少なくともラルゴは嘘を吐くタイプじゃないと思うけどなぁ。」
ムーバに比べたら、ジークリッドも戦闘狂ってだけで、そこまで絶対悪!なイメージでもなかったけど。
アイツには一度襲われてるし、ルーも殺されかけたから…受け入れるには抵抗が生じるわけで。
それでもラルゴだけは、粗暴な印象はあるものの。
卑怯な手だったり騙し討ちだとか…そういうのを嫌ってる風ではあったから。
あの魔族だけは、少しくらい信用してもいいんじゃないかなって思うんだ。
「確かにな。アイツは好戦的だけど、誰彼構わずってよりは…単純に、強い奴と戦うのが好きなだけって感じするし。」
「そそ、ジーナと似てるよね~。」
一度戦ったことのあるジーナの言葉に、ロロはアハハと笑い飛ばす。ルーも顎に指を当てて頷きながら、
「我々を謀るにせよ、わざわざ危険を犯してまで敵地に赴く理由にはならないしな…」
それでも用心に越したことはないと告げ、年少組も賛同してハーイと返事して応えた。
ルーの言うことは最もだけど。
オレとしては、街まで平和に辿り着くことを…願うばかりである。
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