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「セツ…」 「んぁ…オレ、寝てたっけ…」 いつの間にやらオレは、ルーの肩に凭れ眠っていたようで。ルーに起こされ、むにゃむにゃと欠伸しながら目を擦る。 「わ、もう夜じゃん…」 馬車の窓から見えた空は、すっかり暗くなっており…外からは、騎士さん達が談笑する声が聞こえてきた。 「お腹は空いていないか?今休憩を兼ねて、食事も用意しているから。」 言ってルーは手を差し出す。 外からはなんだか旨そうな匂いが漂ってきて… 釣られるように、オレのお腹がぐぅぅ~と鳴り出すもんだから。ルーに思わず苦笑されてしまう。 「ほら、行こうセツ。」 「う~…」 恥ずかしいけど、空腹には敵わず。 ルーの手を取り、外へと出ると…先に食事にありついていたジーナ達がこちらに気付き、手招きしてきた。 「だいぶ熟睡してたなぁ~セツ。」 「だって、前日は緊張して…なかなか寝付けなかったんだもん…。」 ジーナがからかうけど。初めての遠征で、いきなり魔王(ラスボス)と対決すんだぞ? 神子としての役目も果たさなきゃだし…なんか色々考えてたら目が冴えちゃって。 何気に様子を見に来てくれたルーに、添い寝してもらったから。徹夜はしなくて済んだけど…。 「セツは馬車での長い移動も、初めてだからな。疲れが出たのだろう。」 それを知ってるからか、ルーはオレを擁護して。 ぽんと背中を押してくれる。 見上げたら、少しだけ悪戯っぽく微笑んでいたけど。 「ほら、セツもルーも座って。温かいうちに食べるといいよ。」 アシュに勧められ、焚き火の前に腰を下ろした。 「セツ殿、簡単な物で、お口に合うかは分かりませんが…」 どうぞとスープが入った器を渡してくれたのは、オリバーさんで。ありがたく受け取り一口啜ってみると、じんわりと優しい味が胃に染み渡り…癒される。 「わっ…コレ、すっごく美味しいですね!」 「はは、それは何より。遠征中は食事も儘なりませんからね。なるべく簡単で美味しい物をと…色々と試行錯誤しているのですよ。」 特級騎士団の主な仕事は、神子を守護することだけど。 不在の場合は、聖域内とその周辺の調査と管理…そして魔物討伐等が主になるわけだが。各地に出張したり遠征したりがざら、なんだそう。 そのため戦闘は勿論、炊事や洗濯等の雑事も一通りこなせるよう見習いの頃から訓練してて。 今食べてる炊き出しも、騎士さん達が作ってくれたものらしく。それこそ食材が無ければ、現地調達…狩りまでするっていうんだから、 騎士って意外と万能だよね。 (だからルーも慣れてたのかな…) 朝起こしてくれるだけでなく、着替えの用意とか甲斐甲斐しく世話してくれてたけど。 本来なら、そういうのってメイドさんや執事さんの仕事なはず…なんだよね。 ルーは武族…元から上流階級とされる貴族とは、また違うけど。古くから続く騎士家系の坊っちゃんだし。 その割には、一般人のオレとも違和感無く接してて。なんならロロ達やオリバーさん、騎士団の人もみんな気さくで話し易かったから。 騎士ってお高いイメージだったけど、中身は思いの外庶民的というか。結構努力してるんだなぁって、染々と感じた。

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