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ep. 27 冒険序盤の敵には気をつけよう①

「う~…さすがにキツイなぁ…」 道中、ちょっとした魔物に遭遇はすることはあれど。そこはフェレスティナが誇る特級騎士団がいれば、恐るるに足らず。 ルー達守護騎士が殆ど出る幕もないまま。 オレ達一行は、順調に街道を進んでいた。 逆に順調だからこそ、延々と馬車に揺られているわけなので。ちょこちょこ休憩は取るものの、時間は限られているからのんびりもしていられず…。 結果、慣れない馬車に座りっぱなしだと身体がギシギシしちゃったもんだから。 色々ともて余したオレは、ついついぼやいてしまう。 「辛いようなら、休憩を取るか?」 ルーは気遣ってくれるけど、これはオレの甘さ故なので大丈夫とは返すものの…。2日目ともなると、やはり疲労感は否めないわけで。 それよりも… 「3日も風呂に入れないのがなぁ~…」 「え…そんくらい平気じゃね?討伐とか、何日も野宿で歩きっぱなしとかザラだぞ?」 ジーナが呆れるのは解らなくもないし、贅沢な我が儘だとも自覚している。 けどさ~…オレは元来お風呂大好き日本人なわけで。こっちの世界に来てからも幸いかな、毎日お風呂にありつけてたからね…。 1日でも入らないと身体が痒くなるし、服どころかパンツもずっと一緒だから…落ち着かないんだよなぁ。 しかも城下に比べて東側は海沿いだからか、湿度が若干高い気がするし。そこまで暑いわけじゃないけど、少しじめっとしてる分、余計に滅入ってしまうのであった。 「さすがに風呂は、街に到着するまで無理だが…身体を拭くか水浴びをするくらいならば、寄合の小屋で出来るはずだ。」 「え、ホント?」 この世界の陸での移動手段は馬や馬車、徒歩が基本。隣町に行くとなれば、何日も掛けるのが当たり前で。だから整備が進んでいる街道には、雨風を凌いだりする為の小屋が一定間隔で設置されているのだそう。 残念ながらお湯は出ないらしいけど、簡易的なシャワーくらいなら使えるって話なので。オレにとっては願ったり叶ったりな話である。 「でもさ、セツって常に良い匂いがするから。そんな気にしなくていいと思うんだけどなぁ~。」 そこまでして風呂に執着するオレを、ロロは不思議そうに首を傾げるけれど。 「うぇ~…良い匂いとか、なんかヤダなぁ。前にジーナにも言われた気がするけど…」 「ホントだよ~、ほら今だってすっごく良い匂いするよ~?」 そう言ってロロはオレに顔を近付けて、クンクン匂いを嗅いでくるもんだから。オレはギョッとして距離を取る。 「だっ…ダメダメ!2日もお風呂入ってないのに~!」 こらって叱っても、ロロは全然悪びれた様子も無く。良い匂いなのに~と頑なに言い張るし…。しかも、 「確かに、セツはいつも良い匂いがするな。」 「ちょ…ルーまでやめてよっ…」 グイと肩を抱き寄せてくるルーは、あろうことかオレの首筋に顔を寄せ…ロロ同様に匂いを嗅いでくるから… 「やっ…ルーは嗅いじゃダメっ…!!」 堪らずルーの口元を両手で押しやり後退りすれば。 少しつまらなそうにしながら、ジト目でオレを見てきた。 「何故ロロは良くて、私は駄目なんだ?」 「そっ、そうじゃなくて…ロロもダメに決まってんだろ…!」 ちょっとくらい察してくれればいいのに、こういう時のルーは鈍いもんだから。オレはゴニョゴニョと、言葉を濁し目を逸らすしかなく。 「だって…恥ずかしい、じゃんかっ…」 風呂に入ってないのに、そんな堂々と体臭嗅がれるとか拷問だし。 (好きなヤツなら、尚更だろ…) ルーってこんな風に、すぐくっついてくるし… なんだったら、お前の方が常に良い匂いしてると思うんですけど? 「も~…絶対に水場へ寄ってもらうからなっ…!」 こうなったら意地でも綺麗にしなきゃ… また匂い嗅がれたら、堪ったもんじゃないし…。 そう息巻くオレを、ルー達3人は顔を見合せながら。嘆息しつつ苦笑いを浮かべていた。

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