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『アシュのケチ~!』 小屋からはロロの不満そうな声が聞こえ。 酸欠で頭が回らないオレは、唯一残ったルーをきょとりと見上げるんだけど。 「うむ…」 目が合っても、ルーまでバツが悪そうに明後日の方を向いてしまうもんだから。 そこでようやく、自身の異変に気付いた。 「うわっ…なんだコレ…」 さっきのスライム…だっけ? それに襲われた所為なのか、オレの体は全身ねっとりとした粘液まみれとなっており…。 なんとも気持ち悪い光景に、堪らず肌が粟立つ。 「セツ、その…早く身体を洗った方が良い…」 ルーが此方を見ないまま、言いにくそうに告げるから。オレはハッとして青ざめる。 「え…もしかしてコレ、毒とかあんの…?」 「いや…毒性のスライムではない、んだが…」 一瞬不安になるも違ったみたいで。 ホッと胸を撫で下ろすけど。 依然としてルーはソワソワしてるもんだから。 じゃあなんなの?と、視線だけで問い詰めれば。 やっぱりコイツは目を合わせてはくれないものの… それでもようやくして口を開いた。 「だから…目の遣り場に、困るから…」 「え?」 ルーの答えを受け、状況を整理する。 オレは水浴びをしてて…だからまだ全裸なわけ、で。 スライムに襲われたから粘液まみれ、息も絶え絶え… しかも、 『セツのそれキスマ────』 ロロが言い掛けた台詞の意味を理解し。 オレは、今更になって慌てて首元を押さえる。 目が合ったルーの顔は赤くなり、 なんとも申し訳なさそうに目を泳がせていたから… (油断してた…服で上手く隠れてたしっ…) そう…首筋には出発する前にルーが付けたキスマークが点々と、未だ痕が残ってて。 ぶわりと羞恥心に駆られ、オレの全身は真っ赤に熱くなる。 「最悪だっ…絶対なんか、誤解された…」 こんなの付けてたら、 みんなに思われても仕方がない。 けどさ… 「すまない、皆には私から説明を…」 「ダメ!ルーが話すと余計にややこしくなるからっ…」 ここはピシャリと切り捨てて。 しゅんとなるルーにオレは溜め息ひとつ、 「と、とにかく…身体を洗おう、セツ。」 「うう~…。」 ルーに抱えられながら、オレはよろよろと立ち上がった。

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