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④
『アシュのケチ~!』
小屋からはロロの不満そうな声が聞こえ。
酸欠で頭が回らないオレは、唯一残ったルーをきょとりと見上げるんだけど。
「うむ…」
目が合っても、ルーまでバツが悪そうに明後日の方を向いてしまうもんだから。
そこでようやく、自身の異変に気付いた。
「うわっ…なんだコレ…」
さっきのスライム…だっけ?
それに襲われた所為なのか、オレの体は全身ねっとりとした粘液まみれとなっており…。
なんとも気持ち悪い光景に、堪らず肌が粟立つ。
「セツ、その…早く身体を洗った方が良い…」
ルーが此方を見ないまま、言いにくそうに告げるから。オレはハッとして青ざめる。
「え…もしかしてコレ、毒とかあんの…?」
「いや…毒性のスライムではない、んだが…」
一瞬不安になるも違ったみたいで。
ホッと胸を撫で下ろすけど。
依然としてルーはソワソワしてるもんだから。
じゃあなんなの?と、視線だけで問い詰めれば。
やっぱりコイツは目を合わせてはくれないものの…
それでもようやくして口を開いた。
「だから…目の遣り場に、困るから…」
「え?」
ルーの答えを受け、状況を整理する。
オレは水浴びをしてて…だからまだ全裸なわけ、で。
スライムに襲われたから粘液まみれ、息も絶え絶え…
しかも、
『セツのそれキスマ────』
ロロが言い掛けた台詞の意味を理解し。
オレは、今更になって慌てて首元を押さえる。
目が合ったルーの顔は赤くなり、
なんとも申し訳なさそうに目を泳がせていたから…
(油断してた…服で上手く隠れてたしっ…)
そう…首筋には出発する前にルーが付けたキスマークが点々と、未だ痕が残ってて。
ぶわりと羞恥心に駆られ、オレの全身は真っ赤に熱くなる。
「最悪だっ…絶対なんか、誤解された…」
こんなの付けてたら、
みんなにそう思われても仕方がない。
けどさ…
「すまない、皆には私から説明を…」
「ダメ!ルーが話すと余計にややこしくなるからっ…」
ここはピシャリと切り捨てて。
しゅんとなるルーにオレは溜め息ひとつ、
「と、とにかく…身体を洗おう、セツ。」
「うう~…。」
ルーに抱えられながら、オレはよろよろと立ち上がった。
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