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⑤
「また魔物が襲って来るかもしれないから…」
そう赤い顔で告げ、ルーはオレから背を向ける。
「別に…ルーは今更だと思うけど…」
こんな跡まで付けるようなコトを、しちゃってる仲なのに。
ぽつりとそう背中に向け溢すと、ルーは耳まで赤くしたまま動かず。
「いや…それとこれとは、また違うからな…」
よく解らない返事をして、やっぱり振り返ることはなかった。
「う~…つめたぁ…っ…」
結局、全身ガッツリと水浴びする羽目になり。
なかなか落ちないスライムのねばねばを、必死で洗い流す。
(この後みんなに、なんて言い訳しよう…)
テンパっちゃうとすぐボロが出るし。
ルーは馬鹿正直だから、とんでもないこと口走っちゃう可能性特大だし…。
てなると、敢えてスルーするのもひとつの方法かもしれないが。尾ひれはひれと、色々勘違いされたまんまなのも嫌だから…複雑だ。
「セツ、寒くはないか?」
「まあ、なんとか…」
ようやく粘液を洗い流し、ルーが頭を拭いてくれて。心配するルーに、大丈夫だと苦笑して返す。
「風邪を引いてはいけないから、火を起こして暖を取ろう。」
身体を甲斐甲斐しく拭いてくれながら、ルーの手がふと首元で留まって。
よみがえる記憶に、ドキリと胸が高鳴る。
「る、う…?」
(っ…キスマーク…触ってる…)
その指が触れてるモノに気付いたオレは、堪らずルーの名を呼ぶけれど…
「薄くなってしまったな…」
急に低い声になるから、びくりと肩が揺れてしまい。
更には、
「もう一度…付け直して、良いか?」
「っ…!」
消えないように、刻み付けておきたいと。
ルーが目の前で切実に…囁くもんだから。
「…いいよ。オレはルーの、だから…」
好きにしなよって、ドキドキしながら見上げたら。
ちゅっと軽く唇を奪われてしまった。
「んっ…」
脱衣場の衝立に隠れるみたく身体を預け、ルーに首筋をきつく吸われる。
つい漏れ出た声に、咄嗟に口元を押さえ堪えた。
死角にはなってても、周りには見張りをしてる騎士さん達がいるはずだし…すぐそこの小屋の中には、みんなだっているから。
誰かにバレたらどうしようって思うのに。
ルーに与えられる刺激が強すぎて、頭はクラクラ…そんな考えも、すぐに何処かへと飛んでしまった。
「これでまた暫くは残るな…」
肌が白いから目立つな…とか、付けた本人に言われてもなぁ…。さっきみたく恥掻くのオレなんだぞ?
なのにコイツは満足そうに笑ってるし。
「はあ…また首隠せる服にしなきゃ…」
もうバッチリ見られちゃったけどね。
だからって堂々と見せつけてたら、どんな目に合うことやら…考えただけで羞恥心で瞬殺されそうだよ…
「そんなに嫌だったのか…?」
「や、そういう意味じゃなくてさ…」
オレが項垂れてると、ルーはまた勘違いしてゴメンと謝ろうとするから。
(嫌なわけないだろ…)
寧ろ嬉しいじゃんか。
キスマークとか、如何にも所有物っていうか…
独占されてるって感じがしてさ。
初めて付けられた時は、改めて恋人同士なんだなぁ~って…ひとり鏡の前でニヤニヤしてたもん、オレ。
「とりあえず早く着替えて、暖まりに行こう。」
言われてオレは服を着ると、緩んだ顔を引き締めて。みんなが待つ小屋の中へと…向かうのだけど。
「あれ~…なんかさっきより増えてない?」
「えっ…」
すぐにまた後悔させられることになるとは…
浮かれた頭では、思いもよらなかったのである。
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