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「また魔物が襲って来るかもしれないから…」 そう赤い顔で告げ、ルーはオレから背を向ける。 「別に…ルーは今更だと思うけど…」 こんな跡まで付けるようなコトを、しちゃってる仲なのに。 ぽつりとそう背中に向け溢すと、ルーは耳まで赤くしたまま動かず。 「いや…それとこれとは、また違うからな…」 よく解らない返事をして、やっぱり振り返ることはなかった。 「う~…つめたぁ…っ…」 結局、全身ガッツリと水浴びする羽目になり。 なかなか落ちないスライムのねばねばを、必死で洗い流す。 (この後みんなに、なんて言い訳しよう…) テンパっちゃうとすぐボロが出るし。 ルーは馬鹿正直だから、とんでもないこと口走っちゃう可能性特大だし…。 てなると、敢えてスルーするのもひとつの方法かもしれないが。尾ひれはひれと、色々勘違いされたまんまなのも嫌だから…複雑だ。 「セツ、寒くはないか?」 「まあ、なんとか…」 ようやく粘液を洗い流し、ルーが頭を拭いてくれて。心配するルーに、大丈夫だと苦笑して返す。 「風邪を引いてはいけないから、火を起こして暖を取ろう。」 身体を甲斐甲斐しく拭いてくれながら、ルーの手がふと首元で留まって。 よみがえる記憶に、ドキリと胸が高鳴る。 「る、う…?」 (っ…キスマーク…触ってる…) その指が触れてるモノに気付いたオレは、堪らずルーの名を呼ぶけれど… 「薄くなってしまったな…」 急に低い声になるから、びくりと肩が揺れてしまい。 更には、 「もう一度…付け直して、良いか?」 「っ…!」 消えないように、刻み付けておきたいと。 ルーが目の前で切実に…囁くもんだから。 「…いいよ。オレはルーの、だから…」 好きにしなよって、ドキドキしながら見上げたら。 ちゅっと軽く唇を奪われてしまった。 「んっ…」 脱衣場の衝立に隠れるみたく身体を預け、ルーに首筋をきつく吸われる。 つい漏れ出た声に、咄嗟に口元を押さえ堪えた。 死角にはなってても、周りには見張りをしてる騎士さん達がいるはずだし…すぐそこの小屋の中には、みんなだっているから。 誰かにバレたらどうしようって思うのに。 ルーに与えられる刺激が強すぎて、頭はクラクラ…そんな考えも、すぐに何処かへと飛んでしまった。 「これでまた暫くは残るな…」 肌が白いから目立つな…とか、付けた本人に言われてもなぁ…。さっきみたく恥掻くのオレなんだぞ? なのにコイツは満足そうに笑ってるし。 「はあ…また首隠せる服にしなきゃ…」 もうバッチリ見られちゃったけどね。 だからって堂々と見せつけてたら、どんな目に合うことやら…考えただけで羞恥心で瞬殺されそうだよ… 「そんなに嫌だったのか…?」 「や、そういう意味じゃなくてさ…」 オレが項垂れてると、ルーはまた勘違いしてゴメンと謝ろうとするから。 (嫌なわけないだろ…) 寧ろ嬉しいじゃんか。 キスマークとか、如何にも所有物っていうか… 独占されてるって感じがしてさ。 初めて付けられた時は、改めて恋人同士なんだなぁ~って…ひとり鏡の前でニヤニヤしてたもん、オレ。 「とりあえず早く着替えて、暖まりに行こう。」 言われてオレは服を着ると、緩んだ顔を引き締めて。みんなが待つ小屋の中へと…向かうのだけど。 「あれ~…なんかさっきより増えてない?」 「えっ…」 すぐにまた後悔させられることになるとは… 浮かれた頭では、思いもよらなかったのである。

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