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ep. 28 恋煩いて、忍び寄る①

フェレスティナを出発してから3日目の午後。 オレ達神子一行は、魔王城跡に最も近いという港街へと到着した。 港街というだけあって、漁業や物流が盛んで…フェレスティナの中でも規模は大きいのだそう。 行き交う人々には活気が溢れており、賑やかだなぁと馬車で通りすがった街並みを眺めながら、犇々と感じていた。 けどこの街には、もうひとつ重要な役割があり… それは勿論、聖域がある魔王城跡の管理を担っているんだけど。 その故、騎士団が長期滞在するための施設が設けられてるそうで。街を素通りして真っ直ぐ向かってるのが、今まさにその建物なのだが…。 「賑やかなのは同じだけど、フェレスティナとはまた違った雰囲気だね~。」 「この辺りは人の出入りも多く、異文化が混在しているから…その影響もあるのだろう。」 馬車から市場を眺めていたら、ルーが色々説明してくれて。いつぞやの城下町デートを思い出す。 あれは苦い思い出になってしまったけれど… ふたりで屋台を巡ったり、露店の装飾品を見て回ったりしてさ。楽しくもあったなぁと、しみじみ振り返る。 思えば初めてルーを好きだと自覚した瞬間だったわけだし。いつか叶うなら、今度はちゃんとデート…してみたいよね。 「施設って聞いてたけど、かなり広いんだなぁ…。」 国が管理するそれは、旧貴族が元々所有していた物をそのまま再利用してるそうで。外観はお城のように絢爛でいて、フェレスティナの宮殿並みにデカイ。 まあ、騎士団が丸々滞在出来るだけの規模なんだから。当然なんだろうけど。 「神子様、長旅でさぞお疲れのことでしょう。早速お部屋へご案内致します。」 施設の管理を任されている責任者に声を掛けられて。騎士さん達が各々荷解きしている中、オレ達は建物の中へと案内される。 「はぁ~…やっと着いたなぁ~。」 2階の奥に宛がわれた部屋へと、通されたオレは。早速ソファーに腰を落ち着け…一息吐く。 そのままだらんと寝そべってたら、ジーナに笑われて。 「もうスライム風呂に入らなくていいもんな~?」 「ううっ…それトラウマだから、思い出させるなよ~!」 あれ以来、スライムって聞いただけでゾッとすんだよね…。 スライムってゲームの序盤に出てくるような、お決まりの雑魚モンスターってイメージだけど。この世界の魔物の中では、意外と厄介な類なんだそうで… 液状だから、物理攻撃はほぼ効かないらしく。 対処法としては炎属性の魔法などで蒸発させるか、氷系の魔法で凍らせて砕くのが、手っ取り早く有効なんだそう。 あの時は、オレが完全にスライムの中に取り込まれてしまったから…ルーだとすぐには対処出来なかったみたいで。それで咄嗟に火炎系魔法が得意なジーナとロロを呼んだらしい。 ルーは氷系の魔法も得意なので、倒すこと自体は難しいことじゃないんだけどね。 あの状態でスライムを凍らせたら、中にいるオレまで氷漬けになっちゃってたわけだから…。 スライムは基本的にほぼ透明だし、見つけにくい上に倒すにしても厄介らしいから。運が悪かったといえば、そうなんだけどさ… こんなことになるなら、風呂くらい後1日我慢しとけば良かったって話だよなぁ。 スライムに襲われた挙げ句、みんな…しかもオリバーさんにまで裸どころか、キスマークも見られちゃっただろうから…。 その所為なのかあれ以来、なんとなくオリバーさんの態度が、よそよそしい気がするしさ。気まずいったらないよね…とほほ。

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