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②
それはともかくとしてだ。
3日振りに野宿から解放されたもんだからさ。
しかも初めての遠征だし、ちょっとした旅行気分で寛ぐ。
さすがは元貴族の所有物件なだけあって、部屋の造りは豪華だし広々としていて。
…とは言っても、今は主に騎士団が使用しているからか…家具の類いに関しては、神子屋敷などに比べ幾分か簡素なデザインではあった。
「守護騎士の皆様のお部屋は、神子様の部屋を出られて直ぐにございますので。何かありましたら、我々にお申し付け下さい。」
「ありがとうございます、しばらくお世話になります。」
施設内の説明を一通り受け、オレも丁寧に挨拶を交わし…責任者の男性は部屋を後にする。
「じゃあ僕達も一度、部屋に向かおうか。」
アシュが告げると、ロロが嬉々として手を挙げて。
「ねぇねぇ~、夕食まで少し時間あるでしょ?どうせなら街の方に行ってみたくない?」
「おっいいね~、俺も行きたい~!」
年少組は3日程度の野宿では、まだまだ体力が有り余っているのか…爛々と目を輝かせており。
しかし…
「お前達、我々は遊びに来たわけではないのだから…」
自重しないかと、ルーがふたりを窘めれば。
オリバーさんもやんわりと続く。
「ルーファスの言う通りだな。守護騎士たるお前達がセツ殿から離れては、示しが付かないだろう?」
「まあ、そうですよね~。一応言ってみただけだし…」
しゅんとなるロロは、端から諦めてたかのように苦笑してみせるけど。
「なら…オレも一緒に行けば良いじゃん。」
オレが唐突に口を挟んだら、ルーとオリバーさんは目を丸くして見下ろしてくるもんから…。逆にこっちが驚いて、首を傾げてしまう。
「いや、しかし…」
街中といえど油断は禁物。
魔王城だって目と鼻の先、敵陣に足を突っ込んでいるような状況下だ。
おいそれと神子を出歩かせるのは、無謀もいいところだとは思う。けど…
「解ってる。でもせっかくだし、少しくらいなら…ダメ、かな…?」
3日も移動しっぱなしで退屈してたし。
多少羽根を伸ばしても、バチは当たらないと思う。
それにあのラルゴが街中で襲って来るとは、思えないからさ…。
「だったら僕達全員で行こうか?セツも気分転換したいだろうし。」
ね?と目配せしてくるアシュ。
オレの心中を察してか、真面目なルーとオリバーさんをそれとなく説得してくれる。
似た者同士のふたりは、顔を見合せ嘆息していたが…
「確かに、セツにとっては初めて訪れる街でもあるからな…」
「とはいえ、お前達はあくまでセツ殿の護衛であることを忘れるんじゃないぞ?」
ルーも渋々納得して頷けば、オリバーさんもロロとジーナに改めて念押しして。年少組はハーイ!と元気に返事をする。
「へへ…ありがとう!」
オレも何気に浮かれ、思わずルーとオリバーさんの手を取ると…ニコニコと満面の笑みを溢した。
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