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「ヴィンは忙しそうだからね。言伝をお願いしておこうか。」 アシュが給仕する青年にヴィンへの伝言を頼み。 オレとルー、ロロとジーナ、それからアシュとオリバーさんと共に街へと向かう。 高台にある施設からしばらく下って行くと、直ぐに賑わう繁華街が広がり。 ルーが言ってた通り、良く見ると人間以外の種族も沢山歩いていて。 その神秘的な光景に、オレはぽかんと口を開けたまま…暫し心奪われてしまった。 「ほんとにいるんだなぁ…」 物珍しそうに見るのは失礼だろうから。 なるべく目立たぬよう、こっそりと辺りを見渡すと…。 耳やしっぽが生えた半獣人族や、耳の尖ったエルフっぽい人まで様々と…なんだか不思議な気分になる。 城下にも、他種族民がいないわけじゃないんだけど…首都ともなると入国のためのチェックが、他所より若干厳しいそうなので。それほど多くはないらしい。 だからこうして目の当たりにするのは、初めてだったもんだから。本当にここは異世界なんだなぁと、改めて痛感させられた。 「セツ…夢中になり過ぎて、あまり離れないようにな。」 「あ、うんっ…」 オレの腕を引き寄せたルーは、ぽんと頭に触れて。 髪の乱れを指で丁寧に整えてくれる。 …といっても、それはオレ特有の黒髪ではなく。 アリシア様が用意してくれた、あの銀髪のカツラなんだが。こうして街に出なかったら、使う機会もなかっただろうし。 非常時にワガママ言っちゃったけど。 これはこれで良かったんじゃないかなって、前向きに考える。 「港街は人の出入りが激しいからな~。セツは危なっかしいし、ルーに手ぇ繋いでもらっといた方が良いんじゃねぇの?」 迷子になんぞ~とジーナにからかわれて、ついムッと頬を膨らませる。 「なっ、オレはそんな子どもじゃないしっ…」 年下のクセに~…悔しいから反論しようとすんだけど、 「それもそうだな…」 ルーは妙案だと感心して、早速オレの手を握り締めてくるから。 「いやいや、そこまでしなくてもっ…」 さすがに遣り過ぎだし、人前でとか単純に恥ずかしいもんだから…遠慮するんだけども。 「嫌か…?これならば、セツも安心して見て回れると思ったのだが…」 途端にルーが残念そうな目で見られると、ついオレも絆されてしまうから… 「わ、分かったよ…無理に連れて来てもらってるわけだし…。」 みんなや周囲の視線は気になるけど、手を繋ぎたくないわけではないので…。 建前では仕方なく、受け入れることにした。

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