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「セツは女の子って言っても通用しそうだよね~。」 今は特に、と…アシュはオレの頭を指で示す。 言われてみれば、このカツラはロロと同じくらいの長さがあるし。服装もちょっとユニセックスなデザインだから…遠目で見れば、見えなくもないかもだけど。 「さすがに華奢って…そりゃオリバーさんに比べたら、オレの身体なんてへなちょこですけどね~。」 あははって、関西のオバチャンみたいなノリで笑い飛ばしたら。3人は急に真顔になり、じ~っとオレを凝視してきて…。 「セツはどこか儚げで、危機感も乏しく隙も多いから。もう少し自覚した方が良い。」 「そうだよ~。こういう場には悪い輩が沢山いるんだからね?さっきだって何気に、セツへ声を掛けようとしてた男がいたくらいなのだから…」 「セツ殿は見目も人柄も、たいへん魅力的な方ですから。そのように無防備ですと…私は心配でなりませんよ。」 三者三様に説教の如く畳み掛けられ、たじたじになる。 いやいや、ルーが言うのはまだ解るよ? 一応…恋人同士の欲目があるからね。 けどアシュやオリバーさんまで、オレのこと買い被り過ぎやしないか?ロロもそうだけど、すぐ可愛いとか…女の子みたく扱ってくるし…。 勿論それは神子だから、なんだろうけど… ここまで過保護にされると、さすがにどう反応していいのか…困っちゃうよね。 「おっ…オレは男だから平気だよっ!」 「あ…セツ…!」 居たたまれず、ルーの手を放してひとり駆け出す。 すると… 「あだっ…!」 いきなり通行人にぶつかるという失態を犯し。 ぶつけた鼻を擦りながら見上げたら… 「おお~?コイツは随分と上玉じゃねぇか。」 「なんだ嬢ちゃん、俺らと遊びたいのか~?」 言った側から、秒でゴロツキに絡まれる始末。 オレを完全に女だと勘違いしている、屈強そうな男達から。なんとも下卑た笑いを浮かべられ…。 遠慮無しに、オレの腕を掴んでくる。 「ごっ、ごめんなさい…」 ぶつかったのはオレの不注意だったから。 なるべく穏便に遣り過ごそうとは、思うのだけど。 「なら嬢ちゃんの身体で、その誠意を見せてくれよ。」 「えっ、ちょ…」 全く相手にはされず、男達はオレを今にも何処ぞへと連れ込もうとしてくるもんだから… 「軽々しくセツに触れるな…」 「いっ…!!」 いつの間に来たのか…もの凄く怖い顔をしたルーが、オレの腕を掴む男のそれを、ギチリと掴み取り。瞬間…ソイツは痛みに顔を歪ませる。 更には、アシュとオリバーさんまで加わって来て… 「セツにちょっかい出そうだなんて…とんだ命知らずだねぇ?」 「我々の前で不埒な行為に及ぶとは…覚悟は出来ているのだろうな?」 いつもは温厚なふたりも、メチャクチャ殺気立っちゃうもんだから。オレは慌てて声を張り上げた。 「待って待って!悪いのはオレの方だしっ…そのっ、アシュもオリバーさんも落ち着いて…ね?」 お願いだから剣を抜かないで~!と、必死で説得すれば。みんな一応、柄から手を離しはするけれど…。 「だが、セツを連れ去ろうとした事については話は別。やはり少々懲らしめておいた方が…」 「ヒィィッ…勘弁してくれ~!!」 ルーが掴んだままの男の腕を、更に骨が軋みそうなくらい力を込めたので。 男は悲鳴を上げてしまい…仲間の男達も、アシュとオリバーさんに睨まれ後退りしていった。 「ルー、お願いだから…離して?」 もう一度ルーを見上げ、やんわりと訴える。 それでもやはり腑に落ちないといった表情を、浮かべていたが…

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