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⑤
「セツは女の子って言っても通用しそうだよね~。」
今は特に、と…アシュはオレの頭を指で示す。
言われてみれば、このカツラはロロと同じくらいの長さがあるし。服装もちょっとユニセックスなデザインだから…遠目で見れば、見えなくもないかもだけど。
「さすがに華奢って…そりゃオリバーさんに比べたら、オレの身体なんてへなちょこですけどね~。」
あははって、関西のオバチャンみたいなノリで笑い飛ばしたら。3人は急に真顔になり、じ~っとオレを凝視してきて…。
「セツはどこか儚げで、危機感も乏しく隙も多いから。もう少し自覚した方が良い。」
「そうだよ~。こういう場には悪い輩が沢山いるんだからね?さっきだって何気に、セツへ声を掛けようとしてた男がいたくらいなのだから…」
「セツ殿は見目も人柄も、たいへん魅力的な方ですから。そのように無防備ですと…私は心配でなりませんよ。」
三者三様に説教の如く畳み掛けられ、たじたじになる。
いやいや、ルーが言うのはまだ解るよ?
一応…恋人同士の欲目があるからね。
けどアシュやオリバーさんまで、オレのこと買い被り過ぎやしないか?ロロもそうだけど、すぐ可愛いとか…女の子みたく扱ってくるし…。
勿論それは神子だから、なんだろうけど…
ここまで過保護にされると、さすがにどう反応していいのか…困っちゃうよね。
「おっ…オレは男だから平気だよっ!」
「あ…セツ…!」
居たたまれず、ルーの手を放してひとり駆け出す。
すると…
「あだっ…!」
いきなり通行人にぶつかるという失態を犯し。
ぶつけた鼻を擦りながら見上げたら…
「おお~?コイツは随分と上玉じゃねぇか。」
「なんだ嬢ちゃん、俺らと遊びたいのか~?」
言った側から、秒でゴロツキに絡まれる始末。
オレを完全に女だと勘違いしている、屈強そうな男達から。なんとも下卑た笑いを浮かべられ…。
遠慮無しに、オレの腕を掴んでくる。
「ごっ、ごめんなさい…」
ぶつかったのはオレの不注意だったから。
なるべく穏便に遣り過ごそうとは、思うのだけど。
「なら嬢ちゃんの身体で、その誠意を見せてくれよ。」
「えっ、ちょ…」
全く相手にはされず、男達はオレを今にも何処ぞへと連れ込もうとしてくるもんだから…
「軽々しくセツに触れるな…」
「いっ…!!」
いつの間に来たのか…もの凄く怖い顔をしたルーが、オレの腕を掴む男のそれを、ギチリと掴み取り。瞬間…ソイツは痛みに顔を歪ませる。
更には、アシュとオリバーさんまで加わって来て…
「セツにちょっかい出そうだなんて…とんだ命知らずだねぇ?」
「我々の前で不埒な行為に及ぶとは…覚悟は出来ているのだろうな?」
いつもは温厚なふたりも、メチャクチャ殺気立っちゃうもんだから。オレは慌てて声を張り上げた。
「待って待って!悪いのはオレの方だしっ…そのっ、アシュもオリバーさんも落ち着いて…ね?」
お願いだから剣を抜かないで~!と、必死で説得すれば。みんな一応、柄から手を離しはするけれど…。
「だが、セツを連れ去ろうとした事については話は別。やはり少々懲らしめておいた方が…」
「ヒィィッ…勘弁してくれ~!!」
ルーが掴んだままの男の腕を、更に骨が軋みそうなくらい力を込めたので。
男は悲鳴を上げてしまい…仲間の男達も、アシュとオリバーさんに睨まれ後退りしていった。
「ルー、お願いだから…離して?」
もう一度ルーを見上げ、やんわりと訴える。
それでもやはり腑に落ちないといった表情を、浮かべていたが…
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