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「どう…声出せる…?」 「ん…ありがと、ロロ。」 目が覚めると、オレは施設に宛がわれたオレの部屋へと寝かされていて。 ロロが回復魔法を掛けてくれたおかげで、なんとか声を取り戻し…安堵したのも束の間。 「一体…何があったのですか?」 知らせを受けたヴィンも加わり、ロロに介助されつつ起き上がると。オレは先程起こった出来事を、ゆっくりと語り始めた。 「…つまりそのティンカという魔族が、セツ殿を襲い…それをあのラルゴが止めた、と?」 ラルゴと剣を交えたオリバーさんは、何か思うところがあるのか…口元に手を宛て考え込んでしまう。 「これは、オレの推測なんだけど…」 きっとティンカはジークリッドに想いを寄せていて。 ジークリッドが神子に興味を示したから… それが気に入らなくて、オレを消してしまおうと。独断で動いたんじゃないかなって…思うんだよね。 それに… (たぶん、ラルゴも…) ティンカを見つめるあの目が、それを物語ってたから…間違いないとは思うんだけど。 それはオレの想像でしかないため、敢えてラルゴのことは口にせず、前途の内容だけをみんなに伝えた。 「それなら辻褄も合いそうだね。魔族と云えど人と同じく心はあるのだから…当然のことだろうし。」 恋愛感情に理解を示すアシュが納得して頷くも、 ルーはなんだか複雑な面持ちでオレを見つめていて。 「それでも、魔王の仲間がセツを襲ったのは事実…同情には値しないだろう。」 あくまで冷たい言葉を突き付けておきながらも。 性格故、なのか…ルーの目は顕著に動揺を示しており。 オレはその手をぎゅっと握り締める。 「すまない、離さないと言った矢先に…」 「ううん、ちゃんと繋いでたんだから。ルーの所為じゃないよ。」 やっぱり気にしてたんだなぁと、オレが苦笑を浮かべると。ルーも返して握ってくる手の上に、もう片方を添え…包み込んだ。 「例えラルゴが信用に足る魔族だとしても、油断はしない方が得策だろうな…。」 「そうですね。セツにはまた暫く窮屈な思いをさせることになるでしょうが…ティンカという魔族の存在も気になりますので。」 オリバーさんが厳しい表情で告げると、ヴィンも同意して頷く。 「そだね…ごめん、オレが街に行こうって我が儘言ったから…」 「違うよ!セツはボクをっ…」 謝罪を口にしたらロロが割って入るけど。 それを制して、オレは首を横に振る。 「すまねぇな、セツ…」 「ジーナも気にしないで。」 すっかり沈んでしまった年少組の頭を抱き寄せ、ガシガシと掻き混ぜてやる。 そうすればまだ翳りはあるものの。 少しだけふたりの表情は緩められたため…安堵した。 「それよりさ、結局街でなんにも食べられなかったから。オレお腹空いちゃったよ~。」 「…ふふ、セツは本当に優しいねぇ。」 話題を変えるために、自然な流れでそう切り出したんだけど…アシュに笑われてしまい。 目は合ったものの、それ以上は敢えて何も言ってくることはなく。 「食事の用意は出来ているようだし…動けそうか、セツ?」 「うん、もう平気。」 ルーも察して機転を利かせてくれたから、オレは返事して立ち上がる。 「夜営の炊き出しじゃあ、セツは物足りなかったんじゃねぇの?」 「そんなことなかったよ。みんなで外で食べんのも楽しかったし。」 いつも通りに話を振るジーナに、オレは笑顔で答えると。 「ほら、ヴィンもオリバーさんも早く行こう?」 目を合わせ、苦笑するふたりを手招きして。 オレ達はぞろぞろと食堂へと向かった。

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