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ep. 29 酔い宵に飲まるるは…①
『るーう、だぁいすき~!』
港街の管理施設内、食堂にて。
オレ達は食事を取ることにし…ちなみに騎士団員達は広い食堂で、オレ達は特別に来客用の個室へと通された。
「わあ…やっぱ港街ってだけあって、魚がメチャクチャ美味そうだなぁ~。」
神子屋敷だと肉中心だからね、日本人には嬉しい限りである。
「あ、でもさすがにお刺身はないのか~…。」
「オサシミ?セツの国の食べ物か?」
隣に座るルーが問うので説明していると、みんなも驚いたような反応を見せて。
「魚を生で食すとは…なかなか興味深いですね。」
特にヴィンは一緒に勉強していた頃から、オレの世界のことをよく聞いてきていたため。すぐにその話題へと食い付き、なるほどと頷いてくる。
「皆様、地酒をご用意致しましたので是非…」
施設で働く給仕さん達が酒瓶を手に、年長組に向けお酒を振る舞い始めて。
勿論、オレにも薦めてくれたんだけど…
「やっ、オレはいいです。明日すぐに出発だし…」
「なんだよセツ~飲まねぇの?一応大人なんだし、遠慮しなくていいだろ~?」
アルコールが殆ど入っていないらしい、葡萄酒を飲みながら。ジーナがそう言ってくるけども。
オレはいや、と生返事して。
「オレすぐ酔っちゃうからさ~。友達からも酒癖悪いって、散々怒られてたし…」
だから遠慮しとくよって返したら、
「へぇ…それは是非とも酔わせてみたいなぁ~。」
なんて、アシュが面白そうだと云わんばかりに食い付いてくるので。
「ダメだよ、なんかスッゴク絡むらしくて…そっからは全力で禁酒させられたもん。」
「ご友人にそこまで言われるのなら、相当なのでしょうね。」
オリバーさんにまでくすりと笑われてしまい、オレは苦笑して返す。
「ならばセツは、沢山食べるといい。」
「ん、そうするよ。」
ルーが甲斐甲斐しく料理を取り分けてくれたので。オレは早速いただきまーすと、ご馳走に舌鼓を打つ。
さすが鮮度バツグン、どれもホント美味しくって。年長組は酒の肴に談笑しつつ、オレは年少組と一緒に次々と料理を頬張った。
そんなこんなで、束の間にも楽しいひと時を過ごしていたのだけど…。
「んうっ…これ辛っ…」
見た目もちょっと赤々しいなぁとは、思ってたんだけど。とりあえず口にした料理は、舌が痺れるくらい刺激的なもので。堪らずオレは口を押さえ、悶絶する。
「セツは甘党だもんね~。大丈夫?水飲む?」
「ふひぃ~…美味いんだけどなぁ…オレにはちょっと辛すぎて食べらんないかも…」
ロロが顔を覗き込み、さっと水が入ったグラスを差し出してくれて。受け取ってすぐ、それを一気に流し込む。
「はぁ~この水、ほんのり甘酸っぱくて美味しいね~。」
なんて一息吐いてたら、ロロの隣に座るジーナが反応して。
「え?…ソレ、俺らが飲んでた葡萄酒じゃね?」
まあジュースみたいなもんだしなって。
その時は、然して気にも留めてなかったのだけど…
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