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「…ッ……」 「まあまあ、ここは多目にみてあげよう?」 放心状態のルーに、アシュが苦笑いながら声を掛けるけど…反応は無く。 オレはふらふらしながら、 向かい側に座るアシュのとこまで歩き出す。 「アシュもすきだぞ~。」 「ふふ、僕も好きだよ~セツ。」 ならアシュにもちゅーしてあげるよって、両手を広げて抱き付こうとしたら…口元をやんわり手で押さえられてしまい。 「ありがとう。とても嬉しいけれど、キスは我慢しておくね。」 「んぅ~?」 あははと笑って誤魔化すアシュ。 別に我慢しなくて良いのになぁ~? 好きだったら、ちゅーくらいするだろ~? 「はぁ…セツ、とりあえず落ち着いて水でも飲みましょう?」 呆れたように溜め息を吐くヴィンが、グラスを差し出してくるも。 アシュには断られた、ならば…と。 オレはヴィンの涼しげに整った顔を見上げる。 「ヴィン優しい、すき~…」 「……!」 ぎゅうっと胸に抱き付いて、意外と筋肉質なそこに擦り寄る。スキンシップが苦手なのか、ヴィンは一瞬顔を強張らせるけど。 「すみません、ルーファス。」 「………」 ぎこちなくも、オレの頭を撫でてくれるヴィンは。暫し黙った後…何故かルーに向かって謝罪を口にし。 ルーはやっぱり固まったまんまだったけど。 「まさかセツ殿に、このような一面があったとは…」 ちょっと場の雰囲気が微妙になってきたからか、オリバーさんが気を遣ってそう苦笑いを浮かべていたので。 「オリバーさぁん~。」 「え…?」 みんなとしたんだから、ちゃんとオリバーさんとも仲良しさんしなきゃね~と思い。とことこと駆け寄る。 「オリバーさんはカッコいいし、強くて優しくて~…オレ、メチャクチャ憧れてるんですよ~?」 だいすきです~!…って首に腕を回して。 とろんとしてきた視界で見つめたら。 (あ、ルーといっしょの色だ…) 騎士としての所作とか、性格も喋り方も… ルーと似てるなって。 「だからオリバーさんにも、」 「せっ、セツ殿っ…」 ちゅーしますね~…ぐるぐるしてたら、ルーとなんだか重なってきて。 口元に視線が飛んだら、 わけもわからず、無意識にそこへと吸い込まれてくから… 「セツ…!!」 「んぁ…るう…?」 いきなり後ろに引っ張られ… 見上げたらルーがそこに立ってて。 あれれ?となり、オリバーさんと交互に見比べる。 「あ、まだオリバーさんとちゅー…」 ルーが邪魔するから、オレはぷくってほっぺたを膨らませ反論するけど。 「部屋にっ、戻ろう…」 ひょいと抱っこされて、オレはジタバタと抗う。 「その方が良いよ。このままだと、後々セツが困るだろうからねぇ。」 アシュがルーを促すから、オレはイヤイヤと首を振って。 「なんで~オレもまだみんなと一緒にいたい~!」 「駄目だ、セツはもうフラフラじゃないか。」 駄々をこねてもルーは全く聞く耳持たず、スタスタと歩き出した。 「いや…アレは参ったな…」 「スッゴク可愛かったけどね~。さすがにマズイよねぇ…。」 ジーナとロロが疲れたよう、溜め息吐くのが聞こえたけれど。ルーは止まることなく部屋を出てしまった。

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