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④
「ひどいよ~、ルーのばかばか~!」
「酷いのはセツの方だろう…」
オレの部屋まで戻って来ると、ようやくベッドの前で降ろされて。オレはヨタヨタと千鳥足になりながら、ベッドの上にぼすんと座り込む。
そのまま足をバタバタしてたら、大きく嘆息されて…それでもルーは律儀に靴を脱がしてくれた。
なんか怒ってんのかなぁ~?
さっきからずっと眉間に皺寄せてるし。
「ねぇ、なんでルーは怒ってんの~?」
「別に、怒ってなど…」
跪いて靴を脱がしてくれてたルーに飛び付いたら、勢いのまま床にすとんと座り込んで。
オレの身体を支えながら、ルーは黙って見上げてくる。
「うそうそ~怒ってるもんっ。」
怒んないでってオレが口を尖らせても。
赤くなって目を逸らすだけで、ちっとも機嫌直してくんないから。
「やだぁ…オレ、ルーがすきなのにっ…」
嫌いになっちゃったんだ…と、泣きそうな顔で問えば。ルーは違うと答えるけど。
「だったら、ちゅーしてよ…」
首元を指で撫でながら、甘えるようにねだると…
ルーは複雑な顔をしながらも、ちゅっと軽くキスをしてくれた。
でもそんなんじゃ足りないから。
オレはまた、子どもみたいに首をブンブンと振って駄々を捏ねる。
「オレはルーがすきだからっ、いっぱいちゅーしたいのっ!」
いつもみたいに…そう言って口を半分開けてちろりと舌を覗かせたら、ルーはピクッと肩を揺らすけれど…
「はぁ──…皆にも好きだ好きだと言って、キスをしていたじゃないか…」
ああ、なんだ。それでずっと怒ってたのか。
合点がいって、オレは重くなってきた目蓋をパチパチとしばたたかせて。
ルーの唇に一度口付けると、
「ルーのすきと、みんなのすきは違うもん…」
「セツ…」
ルーを見下ろし告げるオレは、ぎゅうっと抱き付いて耳元で誘惑する。
「そんなに疑うならさ…」
今すぐルーのモノにすればいいじゃん?って…
なんだか今は、大胆なことも平気で言えちゃうもんだから。
思いきってエッチなことしようよ~なんて、堂々と誘ってんのに。ルーは狼狽えつつも、ギリギリのとこでオレの身体を制して。
「いけない…お前は今、酔っているから…」
こんな形では抱けないと、冷静に諭そうとする。
「なんでっ…やっぱオレが男だから、やなの?」
「違う、そうじゃない…」
なら抱いてよ…感情がぐらぐらと乱されるオレは、堪らず泣き出してしまい。
ルーは困ったように、よしよしと慰めてくれるんだけど…
「私はセツが好きだから…不本意な形で、傷付けるような真似はしたくないんだ。」
酒の勢いに負けたら、お互いに後悔してしまうからと。切実に訴えるルーを、オレはじっと見下ろす。
「オレのこと、すき…?」
「ああ、大好きだよ。」
ほんとに?
不安に駆られるオレは、何度も何度もルーに詰め寄る。
その度ルーは、好きだ好きだと律儀に応えてくれて。とんとんと、泣きじゃくる背中を擦ってくれるから…なんだか心地良くなり、オレは欠伸を漏らす。
「ルー…すき、だよ…」
もう自分でも何を言ってるのか分からなくて。
そのうち頭も重くなり、ルーの肩に全て委ねれば。
一気に睡魔がやってきて…そうしてオレはすぐに寝息を立て始め、うとうと…と夢現を行ったり来たり。
「はぁ…セツには二度と、酒を与えてはならないな…」
最後に聞こえたルーの溜め息は、なんとも余裕なく吐き出されて。
ふわりと身体が浮き上がったと思えば、
次にはベッドの上…温かな感触に包まれたなら。
唇にもまた、大好きな人のそれが…
熱っぽい吐息混じりにやんわりと、落とされた気がした。
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