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ep. 30 双生の毒牙①
「おはよ、みんな~。」
今朝は久しぶりにベッドでぐっすり眠れたおかげか、爽快な目覚めで。
朝食のために降りてくると。
何故かみんなはオレを認めた途端、固まってしまい…
「セツ、体調は良さそうだね…?」
大丈夫だった?と伺うロロは、何処かよそよそしく。
不思議に思いながらも、オレはうんと頷く。
「思ったより疲れてたのかな~、いつ寝たのか全然覚えてないんだけどさ~。」
みんなでご飯を食べてた記憶はあるものの、どうやって部屋まで戻ったのかは謎で。
う~んと天を仰いで、昨夜を振り返ってはみるけど…
「いや…思い出さない方が良いと思うぞ…」
「え?なんで?」
ジーナの独り言に遮られ、問い返しても曖昧に流されてしまった。
不信感を抱きつつ、みんなと視線を交わしても。すぐに逸らされ…
アシュに至っては、ニコニコと笑顔を向けられるだけで。答える素振りもなさそうだったから。
「ねぇ、ルー…?」
オレと一緒に来たルーを見上げたら、コイツもおんなじように動揺するばかりで。
「ルー、あれから戻って来ませんでしたねぇ。」
「いや…酔いに乗じてなど、私はっ…」
すかさずヴィンがそう溢すと、それは無いと即答するルーファス。
みんな何か隠してるみたいだけど、結局は教えてはくれなくて。独り置いてけぼりを食らっていると…
「昨夜のことは、皆の胸に留めておいた方が良いのでは…?」
おずおずとオリバーさんがルー達に向け、助言めいた台詞を口にして。
オレ以外の全員が目配せし、頷き合うと…
「そうですね…このままだと、セツは部屋に閉じ籠ってしまいそうですし…。」
ヴィンが話を完結させるよう、無理矢理に結論づければ。
「セツ、とにかく…もう二度と酒を飲むんじゃないぞ?」
「えっ…う、うん…?」
ルーがあまりに真剣な眼差しで、そう凄んでくるので…
今までの経験上なんとなくだが…きっとまたやらかしてしまったんだろうな、と。それだけはなんとなく察するのであった。
「そんなことより…朝食後、準備が整い次第すぐに出発となりますからね。」
オレの黒歴史が、新たに更新されたかもしれないのに。ヴィンはハイハイと適当に手を打っては、話をぶった切り。
腑に落ちないながらも、オレは仕方なく食卓に付く。
「着いたばっかなのに、もう出なきゃなんだなぁー…。」
時間も限られているので、ヴィンの説明を受けながらの朝食を取る。
本音もう少しゆっくりしたいところなんだが…
街道は幾分快適だし、野宿も比較的楽だったんだけど。今度は深い森の中って話なので、ルー達は訓練してるし問題はないだろうけどさ。
オレはなんの経験も無いド素人だし…
戦闘要員でも無いから、不安でしかないんだけど…。
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