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「そっか~…騎士さん達は、休まず動いてくれてたんだね…。」 オレがのんびり街に繰り出したり、寝てる間にも。ずっと働いてくれてたんだなぁと、今更ながら気付かされる。 そうなると、なんだか申し訳なくなるけど… ホント感謝しかないよね。 「セツ殿、馬車のご用意が整いましたので。」 ちょうどその時、騎士さんから声を掛けられて。 みんなと一緒に馬車の方へと案内される。 「馬車での移動に不慣れと伺いましたが、お疲れではありませんか?」 案内してくれる騎士さんが、そうオレを気遣ってくれるから。大丈夫ですと返す。 「皆さんがとても良くしてくれるので…騎士さんこそ、大変じゃないですか?」 「我々騎士は神子殿に仕える為、日々訓練を積んで参りましたから。お気遣い頂き、恐縮です。」 多少あどけなさを残すその騎士さんは、にこっと爽やかに胸に手を当て返すから。 「いえ…こちらこそ、いつもありがとうございます。」 騎士さん全員には無理でも、せめて彼には伝えておこうと。日頃の感謝を込め笑顔で告げたなら。 彼は目を見開き、一瞬だけ放心してしまうのだけど… 「そんなっ…セツ殿の為とあらば、我々も喜んで守護させて頂きますゆえ…!」 照れ臭かったのか、騎士さんは真っ赤になって敬礼すると…いそいそと立ち去って行った。 「いや~ここまで来ると、セツの人タラシは確信犯だよなぁ~。」 「神子の真髄は、騎士を虜にしてしまうというねぇ。」 手を振って騎士さんを見送っていると。 ジーナとアシュが一連の遣り取りを傍観しながら、ニヤニヤしており。 「セツ殿が…神子には、そのような力があるのか?」 すると鵜呑みにしてしまったオリバーさんが面食らったよう、アシュの台詞に反応しちゃうもんだから。 「違いますってば~オリバーさん!もう…アシュも適当なこと言うなよな~!」 「その推論も、強ち適当ではないかもしれませんがね。」 オレが全力で否定しても、ヴィンが最もらしく蒸し返してくるので… 「確かに、一理あるかもしれないな…」 「お願いだから信じないで、オリバーさん~!」 根が真面目なオリバーさんは、なるほど~と納得して頷くもんだから。オレはもう諦めガックリ項垂れるしかなかった。 「ルーもなんとか言って───…って、なに…?」 助け船を求め、ルーを見上げたら。 コイツはまた変な顔してオレのこと凝視してるし… たじろぎつつも問えば、黙って溜め息を吐かれてしまい。 「オレ、タラシ込んでなんかないもん…」 むしろそういうのは、ルーとかアシュの得意分野だろ!…ってムスッとして愚痴れば。 「…そういうところだぞ、セツ。」 「ホラまたそうやって、セツは可愛い顔するんだから~。」 ルーには意味の解らないダメ出しを食らい。 ロロからは、お前の方が可愛いだろってツッコミたくなるような台詞を投げつけられてしまった。 更に、 「ハイハイ、茶番はそこまで!さっさと行きますよ~!」 お約束にも、ヴィンにぞんざいな態度でバッサリ切り捨てられちゃったので… オレはモヤッとさせられたまま。 押し込まれるよう、馬車へと乗り込んだ。

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