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魔王城の森入口前では、既に到着していた騎士団によってテントが張られ…着々と準備が進められていた。 オレ達も着いてすぐ、魔王城に向かうための選抜隊の振り分けが成されて。 その内訳は、各隊10名ほどでまず先発隊の1班が出発し。少し間を置いてオレと守護騎士、ヴィンにオリバーさんと騎士団から3名を加えた2班目が、最後尾に3班目が続く形を取るのだそう。 ちなみにオレ達の班に加わる騎士さんは、オリバーさんとこの部下である、あの3人組だったりする。 前日にぐっすり眠れたおかげか、体調も良く。 オレは余裕を持って、いざ魔王城の森へと足を踏み入れたのだけど… 「うわぁ…ホント歩き難いな…」 「この辺りは雨量が多く、先日まで天候が荒れていたそうですからね。」 ヴィンが解説した通り、少し前まで雨続きだった為か鬱蒼と茂る草木は濡れ。手付かずの獣道も、随分とぬかるんでいるから。一歩進む度、ずぶりと足を取られてしまう。 アリシア様が用意してくれてたブーツは、幸いにも森歩きに適した造りではあったものの… 歩き慣れていないオレでは、その性能を活かすには至らず。出発して1時間も経たない内から、既に音を上げていた。 「おわわっ…」 「セツ、大丈夫か?」 ズルッと滑りそうになるのを、ルーが支えてくれる。こんなことを何度も繰り返す度、みんなを足止めしてしまうから。 それを誰かに責められたわけじゃあ、ないのだけど… 「ごめん…全然進めてないよね…」 間を開けてたはずの後続隊にも、何度か追い付かれたり…時間的には1時間は経過してたが、進んでる気が全然しなくて。 情けなくも俯き、謝罪を口にすると。 「無理をしなくていいから。ゆっくり慎重に進もう。」 「そうだぜ~?あんま張り切り過ぎると、セツはすぐバテちまうからな。」 ルーがそう気遣って微笑むと、ジーナも明るく笑い飛ばし…オレの不安を、払拭してくれるもんだから。 「ありがと…でもオレは大丈夫だよ。」 心配させまいと、あくまで気丈に振る舞う。 きっとルー達にはバレてると思うけど。 神子のオレが、弱音なんて吐いてらんないから…なるべく足手纏いにならないようにしなきゃ。 と…多少の不安を抱えつつ、道中で魔物に遭遇したりしながら。それでも着実に前進していたのだけど…。 「ひとまず魔物は掃討したな…セツ殿、お怪我はありませんか?」 「オレはなんともないですよ、オリバーさん。」 魔物とかち合うと、みんながオレを守護しながら戦ってくれて。 奥に進むに連れ、魔物との遭遇率が増してくると。オレの口数も少なくなり…。 朝の余裕は何処へやら、空元気を振るう気力すら無情にも削がれていく。 とは云えど、オレはただ守られてるだけの一番楽な立ち位置なので…。 なんとか踏ん張ってはみるけど。 ド素人にとってこの森は、とことん不向きなわけで。 とにもかくにも、オレは内心ギリギリのところで自我を保つのに必死になってた。

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