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「魔物に関しては、先発隊がある程度片付けてくれてるから少ない方だけどね。これが続くとなると、セツの体力の方が心配だなぁ…。」 こっそり嘆息するオレを、アシュが振り返ると。 ロロもうーんと小さく唸る。 「森の中じゃなけりゃ、ボクが魔法で一掃出来るんだけどね~。」 こういった木々生い茂る地形では、本領を発揮出来ないのか。ロロは歯痒そうに噛み締める。 「こればかりは避けようがないですから、祈るほかないですね。魔族にも気は抜けませんし。」 神頼みとか、ヴィンにしては珍しい発言だったが… それだけ先は読めないのだし。 今後も覚悟して進まなきゃ…ってことなんだろう。 「お前達も心して進むのだぞ。」 「解ってるっスよ~、団長!っ…てぇ!なんで殴るんだよ~ベル!」 「セツ殿の前で素を晒すバカがいるからだよ、アホシロエ。」 団長の株が下がるだろって、相変わらずの激しいコントを始めるのは、オリバーさんとこの団の騎士さん達。 「シロエは本当に学習しないなぁ~。やっぱり脳ミソ溶けちゃってるのかな?」 「カナタは相変わらず、俺の扱いヒドイよね…。」 編成時に、改めて自己紹介してもらったんだけど。 よく殴られたり弄られてたりしてる、人懐っこい印象の騎士さんがシロエさんで。 そのツッコミ役担当が定着している、ツリ目でちょっとヤンチャそうなのがベルさん。 それから外見が一番温厚そうな人が、カナタさんだ。 彼は何気に、神淵の森でも一緒だったんだよね。 「あはは…皆さん相変わらず賑やかですね~。」 「すみません、緊張感のない者ばかりで…」 3人組の遣り取りが面白くて、つい吹き出せば… オリバーさんはバツが悪そうに苦笑し、頭を掻くけれど。 「いえ、おかげで少し気が楽になりましたよ!」 ただでさえ慣れない森歩き、加えて魔物との遭遇で気が滅入りそうだったから。こうして和ませてくれるのは、有難い話だよね。 体力的な問題は、どうにもならないけど。 精神面ではすごく癒された気がした。 「セツ、休まなくて良いのか?」 「うん。先は長いし、動ける内に進みたいから…」 先を急ごうと歩き始めたオレに、ルーは声を掛けるけども。心配ないからと告げ、止めた足をまた一歩踏み出す────が。 「…何か、騒がしいな…」 隣を歩いていたルーは立ち止まると、オレを手で制して。 「え?…なんも聞こえないけど…」 言われて辺りを警戒しても。 聞こえてくるのは、森の情景を物語る木々のざわめきだけで。 オレは訝しんで首を傾げる。 「どうやら…先発隊が戦っているようだな。」 「少し離れていますが、そのようですね…。」 しかしオリバーさんやヴィンまでもが反応し、遥か前方に意識を向け始め…更には、 「後衛も、ちょっと手こずってるみたいだ…」 背後を振り返ったアシュの言葉に、緊張感が一気に膨らんだ。

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