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⑥
「まっ…また魔物が出たの…?」
オレ以外はみんな、前後の状況を把握しているようで。狼狽えるオレを他所に、素早く陣形を取り。
鋭い表情で、辺りを警戒するから…
「何か、来るぜ…」
ジーナが誰に言うでもなく、そう口にした瞬間だった。
「っ……!?」
突如、周囲の空気が一変し…
その異様さは、オレでもはっきり判るくらい────
いや、オレだからこそ判る…というか。
これは…
(また、あの空間…!)
それは直近で体験したばかりの、魔族が造り出した歪な空間。
森の中は、元来の不気味さを更に増幅させ。
外界を…ブツリと遮断していく。
「魔族の術中に、取り込まれたみたいだね…。」
告げるロロが、悔しげに眉をひそめる。
ロロほどの術者が、全く気付けなかったということは…敵の実力は、相当なものなのかもしれない。
「ティンカ…」
異空間から微かに感じ取れる魔力の気配で。
なんとなくだけど、術者が誰なのかが判るような気がして。
無意識に名を口にすると…
「ハズレ…じゃないけど、ティンカはいないよ~。」
「っ…!!」
場違いな声音に弾かれ、見上げた先。
その木の上にはふたつの影が見えて…
「お前達は…」
声を聞いた時点で、気付いてはいたけど。
その主は魔族の双子の少年、ルナーとコナーであり。
相変わらずの無邪気でいて酷く冷めた笑顔を、此方へと向けていた。
「…やはり魔族は、信用なりませんね。」
想定内とばかりにヴィンは嘆息する。
ラルゴからは魔王城での対決まで手は出さないと、約束されてはいたものの…。ティンカの一件もあってか、端から疑っていたようだが。
あれはティンカが独断で動いていただけだったし…。双子の性格を考えたら、これもその可能性が高い気がするんだけど…。
「言っとくけど、ジーク達には内緒で来てるんだから。勘違いしないでね?」
「ボクらがお前らと遊びたいって言ったら、ティンカが手伝ってくれだんだよね~。」
やっぱりオレの予想通り。
ルナーとコナーは律儀にそう答えて。
しかしティンカの姿は見当たらないから…
ジークの時同様、何処か離れた場所で術を使ってるのかもしれない。
「一応、殺さない程度に遊んであげるけど…」
にやりと笑うルナーに、コナーはオレ達を全く同じ顔で見下して。
「たまたま死んじゃったら、仕方ないよね?」
「な…」
まるで虫を躊躇なく踏み潰す子どものように。
あどけなく笑ってみせる双子に、思わずゾッとするも…
「お前のせいで、ティンカがずうっと落ち込んでるからさー…」
「神子がいなくなれば、きっと喜ぶと思うんだ~。」
向けられた殺意より、こんな幼い子どもが平気で残酷な言葉を口にしている事実が、なんだか悲しくて…。
ラルゴの人情味のある印象もあったから。
魔族と神子の関係性を考えると…すごくやるせなかった。
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