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⑦
「セツ、私の後ろへ…」
悲観的になってたら、
ルーがオレの前に一歩庇うよう進み出る。
「死に損ないの騎士じゃん…もっかい死にたいの?」
ケラケラと蔑むコナーを、ルーは表情を変えること無く見つめて。
「私の命はセツの為に在る。お前達にくれてやる気など毛頭無い。」
迷いも無く、はっきりと答えるものだから。
ルナーはつまらないと眉を歪め舌打ちすると…
「なら試してやるよっ…!」
叫ぶと同時に、魔法を発動させた。
「召喚術だ、来るぞ…!」
『了解!』
オリバーさんが叫ぶと、ジーナやシロエさん達騎士3人組が応え、四方を警戒しつつ構える。
すると辺りからは、禍々しい気配が漂い出し…次には、
『グルアアアア…!!』
獣か鳥か…例えようもないほど不気味な咆哮が耳をつんざき、轟いた。
堪らずオレは耳を塞ぎ、身を震わす。
「ルーとアシュ殿はセツを、ロロは後方で我々を援護をして下さい!」
ヴィンが叫び…ジーナに目で合図を送れば、ふたりは同時に走り出していた。
「ぁ……」
周囲は既に現実とは切り離され、異空間にオレ達だけが囚われているという状況。
木々の向こうの景色は既に無く、まるで深い闇だけが延々に広がっているみたいだ。
そこから腹の底にまで響くような、魔物の唸り声が聞こえて。目を凝らせば、闇の中で蠢いてる何かのそれが…ギラリと此方を伺ってたから。
騎士の3人組も、直ちに散開して剣を抜くと。
闇の中の魔物も本能に駆られ、次々と襲い掛かってきた。
「ひっ…!!」
「はッ…!」
最初に現れたのは烏 のように真っ黒な、鳥型の魔物で。木々の隙間から猛スピードで飛行してくる。
ソレはあからさま、オレ目掛け襲ってきたから…
恐怖に悲鳴を上げると、ルーがすかさず剣を振り下ろし叩き切っていった。
ぼとりと地に落ち絶命した魔物は、まるで墨汁が染み込むかのように消えていく。
鳥型の魔物は間髪いれず襲い掛かり…
みんなが応戦して切り捨てていくものの。その猛追は止まることを知らず、
『ルァアアア…!!』
「荒手か…」
二足歩行で墨色の剣を携えた爬虫類型の魔物…所謂リザードと。漆黒の大きな狼みたいな、獣タイプのウォーウルフまでもが召喚され…
戦況はより、緊迫とした空気を漂わせていった。
「ホラホラ、ちゃあんと守らないと。神子が死んじゃうよ~?」
木の上から術を繰り出していくルナーが、不敵な笑みを浮かべ叫ぶ。
「調子に乗んなっ…!」
召喚の大元であるルナーをなんとかしなければと、魔物の追撃を掻い潜るジーナが隙を突き、投剣を放つが…
「ざ~んねん!」
惜しくもコナーにそれを阻止され…投剣は無情にも弾き返されてしまった。
そのままコナーは、自らすとんと下に飛び降りてくる。
「見てるだけじゃつまんないし、ボクも遊んでもらおっかな~。」
そしてにやりとジーナを捉え、構えると…その両拳から黒炎のような魔力を放出させた。
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