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「意気込んだわりに、大したことなかったね~。」 「…まだ終わってはいませんよ。」 嘲笑うルナーを尻目に、ヴィンは至って冷静に返して。 再度攻撃の機械を伺うが…リザードとウォーウルフの猛襲に阻まれ、なかなか思うようには動けないみたいだ。 「加勢するッスよ!」 そこにシロエさんが参戦し、 多少優位な展開へと傾いたように見えたのだけど… 「じゃあ、これならどうかなぁ…?」 ルナーがほくそ笑み、新たな魔法を発動させたら。 「うおっ…なんだコレっ…」 「っ…!!離れて下さい!」 叫ぶヴィンは、察して素早く後退したが。 最前線にいたシロエさんは、一瞬反応が遅れため…間に合わず。 「くッ…」 彼の周りには、無数の黒蝶が瞬く間に現れ… それらがひらり羽ばたくと、辺り一帯に灰のような鱗粉を撒き散らし始めた。 「セツっ…しばらく息を止めていろ!」 「え…う、んうっ…!?」 ルーに言われ、慌てて鼻と口を両手で塞ぐ。 その間にルーは一瞬で風の障壁を作り出し。 鱗粉がこっちに舞って来ないよう、それで遮断する。 「シロエ!」 オリバーさんも魔法で雷を放電させ、シロエさんの周りに浮遊する蝶を一気に粉砕していくけれど… 「だん、ちょ…」 鱗粉をまともに吸い込んでしまったシロエさんは、無情にもその場に膝を付いてしまい… 倒れる寸前、駆け寄るオリバーさんが彼を抱き止めた。 「バカ野郎…油断しやがって…」 叱咤しながらも、ベルさんは悔しげにシロエさんの元へと駆け寄り。 オリバーさんに代わって彼の身を抱き抱えると。 叫ぶアシュの指示に従い、急ぎオレ達がいる場所まで退避する。 「シロエさん、しっかりして…!」 「セツ殿…すんません…」 運ばれてきた彼の顔色は酷く青ざめていて。 異常なほど汗をかき…呼吸もすごく苦しそうで、荒々しかった。 「これはまずいね…毒の回りがかなり速い…」 アシュが警戒しながら、シロエさんの容態を確認してくれるけれど。すぐに顔を曇らせてしまい…更には、 「ふふっ…早くしないと、ソイツ死んじゃうかもよ~?」 「なっ…!?」 ルナーが不安を煽るよう、笑い飛ばしてくるもんだから。 (毒なんて、治せるのか…?) 怪我なら何度も治してきたけど、解毒なんてまだ未知の領域だから。苦痛に歪むシロエさんを前に、オレは固まってしまう。 「ホラホラ、休む暇なんて与えないよ~!」 「チッ…!」 「セツ殿とシロエを守るんだ!」 その間にも、ルナーは魔物をけしかけ、コナーはジーナが今もずっと応戦していて。この異空間だと、みんな思うように戦えないみたいだったし。 加えてオレと、毒に倒れたシロエさんを庇いながらとなれば防戦しきり。攻めることさえ儘ならなくなり…。 「クソっ…セツ殿、少しだけコイツを頼んます!」 「あ、はいっ…!」 ルーが蝶の進行を留めてくれてはいるものの、先程の烏達も襲いくる中で。ベルさんは仕方なくシロエさんをオレに託すと、皆の加勢に戻っていく。 オレに支えられるシロエさんの顔色は、更に紫がかり。呼吸も乱れてきてるから… ルナーが言い通り、早く手を打たないと… かなりヤバいのかもしれない。

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