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⑫
「…油断するなと、いつも言っていただろう。」
「へへっ…すんません団長…ってぇ!!」
呆れ顔で告げるオリバーさんに対し、頭を掻くシロエさんを。ベルさんが例の如く思いっきりどつき倒して。
「バカかてめえは!特級騎士のクセに…反省しやがれ!」
「ほんとソレ。推薦してくれた団長のメンツ、丸つぶれだからね。」
素直になれないのか、口では刺々しいベルさんとカナタさんだけど。表情はなんとなく嬉しそうだったから…
良かった…助けられて。
「回復したばかりで、申し訳ありませんが…のんびりしている暇はなさそうですよ。」
また魔族や魔物が襲ってくるやも判らない状況で。この場に長居するのは、得策ではないと。
皆の体調を確認しつつ、移動を促すヴィン。
「セツは平気か?」
「うん、オレなら大丈夫。」
ルーに問われ、本音は慣れない力を使った所為で、多少の疲労感を覚えはしたけれど。
そこは気丈に振る舞い、すくと立ち上がった。
「セツ殿!先程は、ありがとうございましたッ!」
移動がてら、シロエさんが声を掛けてきて。
胸に手を当て、にっこりとお礼を述べてくる。
「いえ…ちゃんと治せて良かったです。」
本当に治療出来てたのか、自信なかったから。
改めて確認すると、シロエさんは力こぶを作り、
「この通り全快ッス!」と、元気に答えてみせた。
「俺が油断したばっかりに、セツ殿に迷惑掛けちゃって…ホントすんませんっ。」
一転してしゅんと項垂れたシロエさんは、なんだか捨てられた大型犬みたいで。
しかし今度はガシリとオレの手を取り、力強く宣言してくる。
「セツ殿に救われたこの命…次こそは必ず、貴方のために振るわせて下さいっ!」
「あっ、はい!よろしくお願いします…?」
キラキラと目を輝かせるシロエさんの勢いに。
呑まれそうになりながらも、笑顔で返すと。
「シロエ、セツ殿が困惑しているから…」
「おわわっ…失礼しましたっ!!」
ごほん…と咳払いするオリバーさんに指摘され。
シロエさんは慌てて手を離し、じゃあっとブンブン手を振りながら元の位置へと戻って行く。
オレも応えてパタパタと、振り返していたら。
「…………。」
「どしたの、ルー?」
視線を感じてすぐ隣を見上げたら。
なんだか不機嫌そうに口を真一文字に結ぶ、ルーの顔が目に止まったので…
気になって声を掛けても、
ルーは素っ気なく「なんでもない…」と返すのみ。
オレがきょとんとして首を傾げれば…
成り行きを見守っていたアシュ達が、何故か互いに目配せしては…苦笑いするのであった。
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