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「…油断するなと、いつも言っていただろう。」 「へへっ…すんません団長…ってぇ!!」 呆れ顔で告げるオリバーさんに対し、頭を掻くシロエさんを。ベルさんが例の如く思いっきりどつき倒して。 「バカかてめえは!特級騎士のクセに…反省しやがれ!」 「ほんとソレ。推薦してくれた団長のメンツ、丸つぶれだからね。」 素直になれないのか、口では刺々しいベルさんとカナタさんだけど。表情はなんとなく嬉しそうだったから… 良かった…助けられて。 「回復したばかりで、申し訳ありませんが…のんびりしている暇はなさそうですよ。」 また魔族や魔物が襲ってくるやも判らない状況で。この場に長居するのは、得策ではないと。 皆の体調を確認しつつ、移動を促すヴィン。 「セツは平気か?」 「うん、オレなら大丈夫。」 ルーに問われ、本音は慣れない力を使った所為で、多少の疲労感を覚えはしたけれど。 そこは気丈に振る舞い、すくと立ち上がった。 「セツ殿!先程は、ありがとうございましたッ!」 移動がてら、シロエさんが声を掛けてきて。 胸に手を当て、にっこりとお礼を述べてくる。 「いえ…ちゃんと治せて良かったです。」 本当に治療出来てたのか、自信なかったから。 改めて確認すると、シロエさんは力こぶを作り、 「この通り全快ッス!」と、元気に答えてみせた。 「俺が油断したばっかりに、セツ殿に迷惑掛けちゃって…ホントすんませんっ。」 一転してしゅんと項垂れたシロエさんは、なんだか捨てられた大型犬みたいで。 しかし今度はガシリとオレの手を取り、力強く宣言してくる。 「セツ殿に救われたこの命…次こそは必ず、貴方のために振るわせて下さいっ!」 「あっ、はい!よろしくお願いします…?」 キラキラと目を輝かせるシロエさんの勢いに。 呑まれそうになりながらも、笑顔で返すと。 「シロエ、セツ殿が困惑しているから…」 「おわわっ…失礼しましたっ!!」 ごほん…と咳払いするオリバーさんに指摘され。 シロエさんは慌てて手を離し、じゃあっとブンブン手を振りながら元の位置へと戻って行く。 オレも応えてパタパタと、振り返していたら。 「…………。」 「どしたの、ルー?」 視線を感じてすぐ隣を見上げたら。 なんだか不機嫌そうに口を真一文字に結ぶ、ルーの顔が目に止まったので… 気になって声を掛けても、 ルーは素っ気なく「なんでもない…」と返すのみ。 オレがきょとんとして首を傾げれば… 成り行きを見守っていたアシュ達が、何故か互いに目配せしては…苦笑いするのであった。

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