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ep. 31 神子様の愛は分け隔てなく?①
「目標地点には届いていませんが…陽も沈み、これ以上の進行も厳しいので。この辺で夜営としましょう。」
黙々と森の中を進むうち、拓けた場所に到達したところで。
ヴィンがそう切り出し、別れていた班とも合流。
騎士さん達が、てきぱきと手慣れたよう夜営の準備をし始める。
ヴィンの話では、目標の半分も進めていないというから…。
「ごめん、やっぱオレの所為だよね…」
焚き火を囲みながら、罪悪感に俯く。
元々体力も無い上に、慣れない森歩きで足手纏いにも関わらず。先程の双子達との戦いで、二度も神子の力を駆使したからか…明らかに体力が激減してしまった。
なんとかバレないようにと、平静を装ってはみたけれど。気持ちとは裏腹に、足取りは著しく重くなり…自分ではどうにもならなくて。
はぁ…オレってほんと体力無さすぎだよな…。
「セツは力を使い過ぎてしまったのだから、気にする必要は無い。」
ルーはよしよしと慰めてくれるけど。
オレの気分は疲労も手伝い、やはり晴れなくて。
「すんませ~ん、俺が油断したばっかりに…」
「違うよっ、シロエさんの所為じゃないから…」
それを聞いてたシロエさんが、申し訳なさそうに土下座なんめし始めちゃったもんだから…
ちょっと困ってしまった。
「オレがもっと、ちゃんとしてれば…」
体力面もそうだけど、神子の力をもっと上手く使いこなせてたら。こんなすぐにバテたりは、しないのかもしれないし…。
みんなはスゴイことだって、誉めてはくれるけどね…一度気になると、すぐマイナス思考になっちゃうからダメだよなぁ…。
「そう思うのなら、今夜はゆっくり休んで下さい。」
そんなオレの心情など、ヴィンにはお見通しなようで。わざと厳しい口調で言い放つのだけど。
「足手纏いには、なりたくないのでしょう?ならば少しでも体調を整え、明日に備えておいて下さいね?」
「ヴィン…うん、ありがとう。」
彼の態度は一見すると、説教のように見えるけれど…これが優しさだって、オレはちゃんと知ってるから。
苦笑しながらも、笑顔で応えたら。
ヴィンはまた咳払いをひとつ、眼鏡を正していた。
「ならば、今の内に眠った方が良い。」
「そうだぞ、夜の方が魔物も活発だかんな。」
ここは魔物が蔓延る森の真っ只中。
いつ危険が迫るかも判らないのだから…と。
ルーとジーナが気遣い、オレをテントまで誘導してくれる。でも…
「え、ちょっと待って…」
促されて、当然のようにテントで寝ようとしてたけど。
設営されたテントはひとつきり…それは現世でキャンプなんかで使ってた物よりかは、頑丈そうではあってもだ。せいぜい2~3人が入れるかどうか…といった程度の代物。
「みんなは何処で、寝んの…?」
テントの前で振り返り、訊ねれば。
今度はみんな…会話を聞いていた、騎士団の人達までもが全員で。不思議そうにオレを見てくるもんだから。
え、オレなんか変なこと言ったかな…?
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