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「我々は敵襲に備え、交代で見張りをせねばなりませんから…」 なんとなくオレの言いたいことを理解してくれたオリバーさんが、説明してくれるのだが…。 騎士さんもルー達も、一応仮眠は取るらしいけど。 基本的には夜通し外で過ごして、魔物などの警戒にあたるのだそう。 「もしかして、座ったまま寝るの?寝袋とかは…?」 「遠征とか訓練なら野宿が当たり前だぜ?徹夜で戦いっぱなしなんてザラだし…寝袋なんか使ってたら、いざって時に邪魔だろ?」 因みに仮眠時には、マント等を代用して寒さや雨を凌ぐって言うんだから。荷物も最小限に…とか、色々なとこで工夫してるようだ。 騎士の印象って、もっと気品があって華やかなもんだと思ってたのに。実はかなりワイルドで、過酷な職種なんじゃないだろか…。 「じ…じゃあっ、オレも外で寝るよ!」 そんな話を聞かされちゃあ、ひとりテント寝るだなんておこがましく思えて。 なのに騎士団の人達は、ザワザワし始めるし… ルー達も、困ったよう互いを見合せてしまう。 「セツ…先程も話したばかりでしょう?」 ヴィンも頭を抱え、呆れたよう溜め息吐くけれど。 「だって、みんなはオレを守って戦って…怪我もして、疲れてるじゃんか…」 何もしてないオレだけが、悠々とテントを使うだなんて出来るわけないだろ? 「セツ、君は神子でボクらは騎士なのだから。セツが気に病む必要なんて無いんだよ?」 アシュにも優しく諭されるけど、それでも納得は出来ず。頑なに俯くオレだったが…。 するとルーはオレへと目線を合わせ、肩に優しく手を置くと。ゆっくりと口を開いた。 「セツ…我々はこの日の為に、ずっと鍛練を続けてきた。だからどのような過酷な状況でも、それなりに対処することが可能だ。だが…セツは、そうもいかないだろう?」 「う、うん…」 オレの気持ちを汲み取るように。 ルーは穏やかに微笑みながら、一語一語丁寧に話し掛けてくる。 「この先また魔族や魔物が現れたら、負傷者も増えるかもしれない。」 治癒魔法が使える騎士は、ロロを始め騎士団の中にも何人かいるそうだが…それでも対処出来なくなる可能性は、否めないのだと。更に、 「セツ以上に高位の治癒魔法を扱える者など、存在しないのだから。」 どうか皆を守る為にも、身体を休めて欲しいと… ルーは真摯な眼差しで以て、オレに頭を下げてくるから。 「…解ったよ。」 ここまでされて、みんなからも同じように見守られたら。それこそ我が儘だって…困らせちゃうだろうから。 「ありがとう…みんなも。今は甘えさせてもらうね。」 ぺこりと深く頭を下げたら、一時固まってしまった騎士さん達も表情を緩めてくれて。 「甘えだなんて思ってないッスよ?なんたってセツ殿は、オレの命の恩人なんスから~!」 シロエさんが大袈裟なくらい大きな声で笑えば、うるさいとベルさんが拳でツッコミを入れて。 闇夜の森の、不気味なこの空間が。 ちょっとだけ…和やかな笑いに包まれた。

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