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③
(ふう…)
おやすみなさいと挨拶して、ひとりテントへと入ると。簡易的にも寝床が作られており…ありがたく、とすんとそこへ雪崩れ込む。
外からは夜の帳を賑やかす、騎士さん達の談笑が届き。それに耳を澄ませながら…オレはゆっくりと目を閉じた。
(思ってるより疲れてんのかな…)
緊張感も解け、気が緩んだのか…
横になった途端、身体がずしりと重く感じて。
何故だか目頭が熱くなる。
それは魔族との戦いを、よりリアルに実感しているからで。
不安や恐怖心もあったのだろうけれど…。
何よりルー達の…人の優しさに触れたからこそ、感極まったというか…。
(泣いてる場合じゃないのにな…)
グスッと、外に聞こえないように嗚咽を堪え涙する。
泣いてるだなんてバレたら、ルーがすっ飛んで来そうだし…みんなにもまた、気を遣わせてしまうから。
でも今だけ、ほんの少しだけ。
弱い部分を吐き出しておきたくて。
(明日も頑張らないと…)
ポロポロと涙を溢しつつも、睡魔には抗えず。
次第にうとうとと、瞼が重くなる。
オレが休んでるからか、外は多少静かになったものの…相変わらず、みんなの声が微かに聞こえて。
『このままだと…セツには厳しいのかもしれませんね…』
『そうだね…本人は隠そうとしてるけど、相当参ってるみたいだし…』
夢現、ヴィンとアシュの神妙な会話が耳を掠める。
『魔王城跡はまだ先だし…かといって、のんびりしてる暇もねぇからなぁ…急がねぇと、間に合わなくなるかも…』
『ああ…』
ジーナが珍しく重たげな溜め息を漏らすと…
ルーが何か考え事でもするかのよう、一言だけ返す。
(ルー…)
これが夢かは解らないけど。
深く眠りに就いたオレには、もう何も聞こえなくなり…
長い夜はゆっくりと…
されど、あっという間に過ぎ去っていった。
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