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翌朝、騎士さん達の声で目が覚め、テントから出ると。ルー達も既に身支度を終えていた。 「おはようセツ、良く…眠れたか?」 「うん、なんとかね…。」 オレを認めたルーが近付いてくると、オレの髪を鋤いて丁寧に寝癖を整えてくれる。 (あんまし寝た気がしないんだけど…) 始めこそは、すんなりと眠れてたはずなんだが…。 慣れない野宿に疲労も蓄積してしまい、正直なとこ身体は思いのほか気怠くて。 歩きっぱなしだった足はもう、パンパンになってた。 とはいえ…ひとりだけテントを使わせてもらったし、心配も掛けたくないから。 ルーは今も黙ってじーっとオレを見てるけれど… とりあえずふにゃりと微笑み返し、どうにかその場は誤魔化しておいた。 「はよ~セツ!すぐ出発になると思うから、軽く食べといてね~。」 ロロに声を掛けられたのを言い訳に、まだ何か言いたげなルーを躱す。 こういう時のルーは勘が良いからね。 油断して、疲れを顔に出さないようにしなきゃ…。 そんなこんなで食欲も微妙なまま、無理矢理に朝食を摂った後。昨日同様、3班に別れ出発したのだが… 「セツ…辛かったら、遠慮せず言ってくれ。」 1時間も経たないうちに、ルーからそう切り出され…皆が立ち止まる。 「…っへーきだよ、昨日早めに休んだし。まだ全然歩いてないからさっ…」 繕って言い訳してみても、ルー達は微妙な顔してオレを見てくるので。 それでもなんとか、笑ってみせるのに。 (やっぱりバレバレだよね…) 自分でも解ってる、あからさまペースダウンしてるってさ…。 だからといって歩けないとは言えないし。 そんな悠長なことしてたら、期日までに間に合わなくなるかもしれないだろ? ラルゴと約束した当人が、やっぱり行けませんでした~…なんてことになれば、話になんないからね…。 「も~、みんな心配性だなぁ。」 すぐ甘やかすんだからって、軽いノリで誤魔化して。ひとり大手を振り、スタスタと歩き出すのだが。 「ほんとに大丈夫だから。ほらっ急がないと───」 気丈に振る舞うも、そこでくらりと視界が揺れて。足の力が抜け落ち、倒れそうになるから… 「セツ!」 ルーが素早く駆け寄り、抱き止めてくれたため。 その場は事なきを得たが。 しかし… 「ごめっ…ちゃんと前見てなかったから、足引っかけちゃったよね~…」 あははって苦笑しても、ルーは顔を曇らせるばかり。極め付きには溜め息まで吐かれてしまい… 「セツ…やはりこれ以上歩くのは無理だ。」 「え…」 きっぱりと断言されて。 恐る恐る見上げたルーの目が、厳しくオレを捉えるものだから…。 ちくりと胸が痛む。 「そうだぜ、セツ。無理して魔王城に辿り着いたとしても…そんな状態じゃあ、どうにもなんねぇだろ?」 無茶すんなよってジーナからも告げられ、堪らず俯いた。 「こうなっては、魔族の元へは一旦我々だけで向かい…セツ抜きで、交渉なりした方が良いのかもしれませんね…。」 ジークリッドの人となりは定かではないが。 ラルゴならば、少しは話を聞いてくれるのではないか…と。 ヴィンも頭を捻り、色々と模索してくれるのだが。 「そんなっ…オレだって、他人事じゃないのに…」 ジークリッドが要求しているのは、神子のオレだ。 その当事者が行かず、ルー達が戦っているのを指を咥えて待ってるだけだなんて…出来るわけないじゃないか。 「しかし…セツ殿の負担を考えると、このままでは…」 オリバーさんが危惧するように。オレの鈍足ペースに合わせてたら、約束の日時には到底間に合わないのだろう。 解ってる…これこそ我が儘なんだって。 でもルーはまた、あのジークリッドと戦うことになるんだし。無情に貫かれた瞬間を、オレは一度目の当たりにしてるものだから…。 そんな大事な時に、傍にいられないだなんて… 絶対にイヤなんだよ。

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