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④
翌朝、騎士さん達の声で目が覚め、テントから出ると。ルー達も既に身支度を終えていた。
「おはようセツ、良く…眠れたか?」
「うん、なんとかね…。」
オレを認めたルーが近付いてくると、オレの髪を鋤いて丁寧に寝癖を整えてくれる。
(あんまし寝た気がしないんだけど…)
始めこそは、すんなりと眠れてたはずなんだが…。
慣れない野宿に疲労も蓄積してしまい、正直なとこ身体は思いのほか気怠くて。
歩きっぱなしだった足はもう、パンパンになってた。
とはいえ…ひとりだけテントを使わせてもらったし、心配も掛けたくないから。
ルーは今も黙ってじーっとオレを見てるけれど…
とりあえずふにゃりと微笑み返し、どうにかその場は誤魔化しておいた。
「はよ~セツ!すぐ出発になると思うから、軽く食べといてね~。」
ロロに声を掛けられたのを言い訳に、まだ何か言いたげなルーを躱す。
こういう時のルーは勘が良いからね。
油断して、疲れを顔に出さないようにしなきゃ…。
そんなこんなで食欲も微妙なまま、無理矢理に朝食を摂った後。昨日同様、3班に別れ出発したのだが…
「セツ…辛かったら、遠慮せず言ってくれ。」
1時間も経たないうちに、ルーからそう切り出され…皆が立ち止まる。
「…っへーきだよ、昨日早めに休んだし。まだ全然歩いてないからさっ…」
繕って言い訳してみても、ルー達は微妙な顔してオレを見てくるので。
それでもなんとか、笑ってみせるのに。
(やっぱりバレバレだよね…)
自分でも解ってる、あからさまペースダウンしてるってさ…。
だからといって歩けないとは言えないし。
そんな悠長なことしてたら、期日までに間に合わなくなるかもしれないだろ?
ラルゴと約束した当人が、やっぱり行けませんでした~…なんてことになれば、話になんないからね…。
「も~、みんな心配性だなぁ。」
すぐ甘やかすんだからって、軽いノリで誤魔化して。ひとり大手を振り、スタスタと歩き出すのだが。
「ほんとに大丈夫だから。ほらっ急がないと───」
気丈に振る舞うも、そこでくらりと視界が揺れて。足の力が抜け落ち、倒れそうになるから…
「セツ!」
ルーが素早く駆け寄り、抱き止めてくれたため。
その場は事なきを得たが。
しかし…
「ごめっ…ちゃんと前見てなかったから、足引っかけちゃったよね~…」
あははって苦笑しても、ルーは顔を曇らせるばかり。極め付きには溜め息まで吐かれてしまい…
「セツ…やはりこれ以上歩くのは無理だ。」
「え…」
きっぱりと断言されて。
恐る恐る見上げたルーの目が、厳しくオレを捉えるものだから…。
ちくりと胸が痛む。
「そうだぜ、セツ。無理して魔王城に辿り着いたとしても…そんな状態じゃあ、どうにもなんねぇだろ?」
無茶すんなよってジーナからも告げられ、堪らず俯いた。
「こうなっては、魔族の元へは一旦我々だけで向かい…セツ抜きで、交渉なりした方が良いのかもしれませんね…。」
ジークリッドの人となりは定かではないが。
ラルゴならば、少しは話を聞いてくれるのではないか…と。
ヴィンも頭を捻り、色々と模索してくれるのだが。
「そんなっ…オレだって、他人事じゃないのに…」
ジークリッドが要求しているのは、神子のオレだ。
その当事者が行かず、ルー達が戦っているのを指を咥えて待ってるだけだなんて…出来るわけないじゃないか。
「しかし…セツ殿の負担を考えると、このままでは…」
オリバーさんが危惧するように。オレの鈍足ペースに合わせてたら、約束の日時には到底間に合わないのだろう。
解ってる…これこそ我が儘なんだって。
でもルーはまた、あのジークリッドと戦うことになるんだし。無情に貫かれた瞬間を、オレは一度目の当たりにしてるものだから…。
そんな大事な時に、傍にいられないだなんて…
絶対にイヤなんだよ。
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