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「ほら、セツ。」 「ごめんね、ジーナにまでおんぶしてもらっちゃって…」 しゃがんで背を向けるジーナに促され、ありがたくその背に身体を預ける。 身長も伸びてオレと変わらなくなってきたし。 体格だって、鍛練の積み重ねでしっかりしてきたジーナは。 「別にっ…遠征時の荷物に比べたら、お前なんて軽い方だし…なんてことねぇよ。」 …と照れ臭そうにしながらも、ぶっきらぼうに返してくるから。反応が可愛いなぁ~なんて、思わずにやけてしまう。 「ふは…ジーナは優しいなぁ~。」 「なっ…ちょ、耳元で喋んなって…」 わざと首にぎゅーっとしがみついたら、もっと赤くなってオロオロし始めるジーナ。 なんていうか、ロロとはまた違った意味で母性本能を擽られるよね。 「くそっ…人の気も知らねぇでっ…」 「え?なんか言った?」 聞いても「なんでもねぇよ!」って、素っ気なく返されてしまった。 ジーナはスキンシップとか、ベタベタするような性格じゃないし。どっちかっていうと硬派な性格してるからね。こういうノリには慣れてないのかも。 爆走していたロロとは打って変わり、少し緊張したよう歩くジーナも疲れとは無縁で。交代まで休むことなく順調に、森の中を進んでくれた。 「だいぶ休めたし、少しは自分で歩いてもいいけどな…」 「いえ、このペースを保たなくては間に合わなくなる可能性がありますので。」 貴方は黙って運ばれて下さいと、3番手のヴィンはオレの前で背を向け屈む。 「じゃあ、よろしく…」 ヴィンに反論しても勝てる見込みは無いから、遠慮なく背負われる。 「しっかり捕まって下さいね。」 「はーい。…あ、」 言われた通り、ヴィンの首に腕を回して。 細身に見えて意外とガタイが良いんだなぁ~とか。 普段はオレの勉強をみてくれたり、宮殿とを行き来して忙しそうにしてるから。 騎士っていうよりは文官とか、頭使ってるイメージの方が強いヴィンだったけど…。 「何ですか?」 「いや、ヴィンもやっぱ騎士なんだなぁと思って…。」 背中までガッチリ筋肉質だし。 そういえばルー達と一緒に鍛練してるとこも、あんまり見たことなかったよな…。 そう思ったことを告げたら、ヴィンは器用に眼鏡を正し。 「守護騎士ではなくとも、私も貴方を護る騎士のひとりですからね。」 一応鍛練も毎日欠かさず続けてはいるのだと、ヴィンは前を向いたまま答える。 …そっか、いつも忙しいのに。 知らないとこで努力してたんだな、ヴィンも。 しかもオレを守るために…だなんてさ。 そんな風に大事にされたら、嬉しくないわけないじゃんか…。 「…まあ、あくまで自身の為にしてきたことなのですが。」 言っておいて恥ずかしくなったのか、そう付け加えてしまうけども。 「…なら、そういうことにしとくよ。…ありがと、ヴィン。」 こっそり耳打ちするように、感謝の言葉だけは伝えたら。ヴィンは大袈裟にも咳払いをしていた。

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