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⑦
「ほら、セツ。」
「ごめんね、ジーナにまでおんぶしてもらっちゃって…」
しゃがんで背を向けるジーナに促され、ありがたくその背に身体を預ける。
身長も伸びてオレと変わらなくなってきたし。
体格だって、鍛練の積み重ねでしっかりしてきたジーナは。
「別にっ…遠征時の荷物に比べたら、お前なんて軽い方だし…なんてことねぇよ。」
…と照れ臭そうにしながらも、ぶっきらぼうに返してくるから。反応が可愛いなぁ~なんて、思わずにやけてしまう。
「ふは…ジーナは優しいなぁ~。」
「なっ…ちょ、耳元で喋んなって…」
わざと首にぎゅーっとしがみついたら、もっと赤くなってオロオロし始めるジーナ。
なんていうか、ロロとはまた違った意味で母性本能を擽られるよね。
「くそっ…人の気も知らねぇでっ…」
「え?なんか言った?」
聞いても「なんでもねぇよ!」って、素っ気なく返されてしまった。
ジーナはスキンシップとか、ベタベタするような性格じゃないし。どっちかっていうと硬派な性格してるからね。こういうノリには慣れてないのかも。
爆走していたロロとは打って変わり、少し緊張したよう歩くジーナも疲れとは無縁で。交代まで休むことなく順調に、森の中を進んでくれた。
「だいぶ休めたし、少しは自分で歩いてもいいけどな…」
「いえ、このペースを保たなくては間に合わなくなる可能性がありますので。」
貴方は黙って運ばれて下さいと、3番手のヴィンはオレの前で背を向け屈む。
「じゃあ、よろしく…」
ヴィンに反論しても勝てる見込みは無いから、遠慮なく背負われる。
「しっかり捕まって下さいね。」
「はーい。…あ、」
言われた通り、ヴィンの首に腕を回して。
細身に見えて意外とガタイが良いんだなぁ~とか。
普段はオレの勉強をみてくれたり、宮殿とを行き来して忙しそうにしてるから。
騎士っていうよりは文官とか、頭使ってるイメージの方が強いヴィンだったけど…。
「何ですか?」
「いや、ヴィンもやっぱ騎士なんだなぁと思って…。」
背中までガッチリ筋肉質だし。
そういえばルー達と一緒に鍛練してるとこも、あんまり見たことなかったよな…。
そう思ったことを告げたら、ヴィンは器用に眼鏡を正し。
「守護騎士ではなくとも、私も貴方を護る騎士のひとりですからね。」
一応鍛練も毎日欠かさず続けてはいるのだと、ヴィンは前を向いたまま答える。
…そっか、いつも忙しいのに。
知らないとこで努力してたんだな、ヴィンも。
しかもオレを守るために…だなんてさ。
そんな風に大事にされたら、嬉しくないわけないじゃんか…。
「…まあ、あくまで自身の為にしてきたことなのですが。」
言っておいて恥ずかしくなったのか、そう付け加えてしまうけども。
「…なら、そういうことにしとくよ。…ありがと、ヴィン。」
こっそり耳打ちするように、感謝の言葉だけは伝えたら。ヴィンは大袈裟にも咳払いをしていた。
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