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⑩
さてさて…魔王との決戦という目的に反した、何ともシュールな移動手段にも、すっかり慣れてしまった頃。
次には騎士のジルさんとカナタさんが、続くはずだったのだが…
「俺は空気読める男なんで。団長お先にどーぞ。あ、なんだったら一番最後に回してもらっても構わないんで。」
ベルさんが手を上げてそう申し出れば、カナタさんも右に習い…
「なら私も、お二人に順番をお譲りしますよ。本音は今すぐにでもっ…て言いたいとこなんですけど。先にベルが余計なこと言い出しちゃったんで。」
…といっても、随分と喧嘩腰だったものだから。
ベルさんとバチバチ険悪な雰囲気には、なっちゃったけども。
まあ、そういうことなので…
「ベル達も、こう申しておりますし…」
「あ、オリバーさん…はい、宜しくお願いします!」
なんだか畏まってしまい、互いにぺこりと頭を下げた。と…
「セツ殿、その…ずっと背負われているのも、大変ではありませんか?」
「えっ…あ~…と、」
唐突に問われ、思わず頬を掻く。
言われてみれば確かに…や、楽っちゃ楽なんだけど。
何時間も同じ体勢でしがみついてるのって、それはそれで身体は強張ってくるし…腕も疲れるというか。
てか、そこに気付くのって…さすがオリバーさんだよね。
「同じ体勢だと、それなりに負担も掛かるでしょうから。もし、セツ殿が宜しければ…横抱きにしては如何かと、思いまして…。」
「え?それって…」
つまり、オリバーさんにお姫様抱っこ…してもらうってことだよね?
ルーならまだしも、さすがにオリバーさんにそんなことさせるとか…恐れ多くないデスカネ…
なのでオレは慌てて両手を振って。
「そっ、そんな…申し訳ないですっ…」
おぶってくより遥かに負担は大きいだろうし。
みんなの憧れである騎士団長様に…だとか申し訳ないし、何より恥ずかしかったから…
勿論、遠慮するのだけど。
「私ならば皆同様、日々鍛えておりますから。心配には及びませんので。」
目映い微笑みで手を差し出されたら、逆に断ることすら憚られ。どうしたものかと、一応迷ってはみたものの…
「あ…ぅ…じゃあっ、お願いシマス…?」
ついイケメンの圧しに流されるオレは、無意識にOKサインを出してしまい。
なんだか嬉しそうに微笑むオリバーさんを、認めてしまったので…。
後悔しつつも、そんな顔をされてはもう、今更後には引けないのであった。
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