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⑬
「まだ機嫌…直んないのか?」
「別に、私はっ…」
少しは解消されたかには見えたのだが…
オレを抱えて歩く間も、どこか腑に落ちない様子だったルー。
今夜の夜営地点に到着してからも、何かと考え耽る節があって…。さすがに気になり、隣に座るルーの腕をえいっと小突く。
コイツは違うと誤魔化すけどね。
ずっと一緒に過ごしてきたんだし…今は恋人同士なんだから。気付かないわけがないじゃん…
てか…メチャクチャ判り易いし。
『後で慰めてあげたらいいよ』
アシュに言われた言葉を、ふと思い出し…オレは辺りを見渡す。
昨日はオレが足を引っ張った所為で、全然進めなかったけど。おんぶ作戦は地味に効果を発揮し、目標距離までなんとか巻き返せたのは幸いで。
皆一安心といった様子で、談笑していた。
と…もう一度ルーへと視線を戻すと。
バツが悪いのか目が合わないよう遠くを見つめ、ぼんやりしていたので…
「オレっ…ちょっとトイレ、行ってくるから…」
すくっと立ち上がり、ルーの袖を引っ張る。
「怖いから…ルーもついて来てよ。」
促して、オレはルーをその場から連れ出した。
「セツ、あまり遠くへは行かないようにな?」
ルーの腕を引いて、足早に歩く。
コイツはほんとにトイレだと勘違いしてるみたいだから、そう注意してくるのだけど…。それは百も承知、でも誰かに見られたらマズイんだよ。
だって…
「ルー、こっち…」
グイグイ引いて、茂みの奥へと誘い込み。
「や…私はそこで、待っているから────」
困惑し出すルーは、手を離そうとするから。
半ば強引に引き寄せると…
「っ……」
オレは背伸びして、自分からルーにキスをする。
最初は全く状況が呑み込めず、硬直していたルーだったけど…。
「セ、ツ…」
「…オレからこういうコトすんの、変かな?」
本当は、昨日だってひとりテントで寝るのが寂しかったし。いつもだったら一緒に寝たり、おやすみのキスだって出来たのになぁとか…思ってたんだ。
恥ずかしながらも、そう本音を口にしたら。
「んっ…」
遠慮がちに、でも余裕なく抱き寄せられ…
心ごと奪われるから。
応えたくて、ぎゅって背中に腕を回せば。
木の幹にとすんと押し付けられた。
そのまま舌も絡められ、きつく吸い付かれる。
「は…ぁっ…」
「セツ…」
唇をくっつけたまんま、名前を呼ばれるのってゾクゾクする。
たったこれだけのことなのに。
ルーが触れてるんだと思えば身体中、五感の全てが歓喜して。
もっともっとって、欲張りになるけど…。
「セツ、これ以上はっ…」
「んっ…解ってる…」
流されそうになるのを抑え、啄むようなキスに留め…それでも何度も重ねる。
視線はずっと外さぬままに、うっとりと見つめ合って…。
「ルー…」
「ん…?」
熱い吐息を漏らしながら、ルーの首筋にしがみつき。
「好きだよ…。」
耳元へと口付けながら、ソワソワと心臓は馬鹿みたいに跳ね上がる。
「ああ、私もだ…」
愛してる。
大好きな声で、大好きな人が応えてくれるから。
やっぱり特別なんだなぁと…オレはこっそりと苦笑った。
「機嫌…直してくれた?」
「む…すまない…」
こんな女の子みたいに甘えた仕草で、自分でもびっくりだけど。
ルーだから甘えたいというか…
乙女になってしまう自分もいるのも本心で。
妙に浮わついた声音で、キスをねだりながら問えば。ルーは決まり悪そうにしながらも、ちゃんとオレの心を読み取ってくれるから…。
「ん…」
望み通りの甘いキスを。
欲しがる分だけ与えてくれるのだ。
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