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ep.32 騎士団長様の恋の行方① 

ゆらゆらと、心地好い浮遊感と温もりにすがりながら。夢見心地、いつの間にやら全身柔らかな感触に包み込まれて… 「んっ…」 「あ…起こしてしまったか?」 目を開けると、オレは何故かベッドの中。 知らない天井と微笑むルーの顔が、ぼんやりと視界に入った。 「ふえ…ここ、どこ…?」 「セツは途中で眠ってしまったからな。」 ルーの説明によると、ここは魔王城の手前に設けられた騎士団等が滞在するための基地だそうで。 あの後、翌日もおんぶ作戦は継続されたため。 どうやらオレは、背負われたまま寝落ちし…いつの間にか到着してたらしい。 オレが起きそうになかったことから、そのまま寝かせてくれてたみたいだけど。気付けば窓の外はもう、すっかりと暗くなってしまっていた。 壁に掛けられた時計は、9時を指してたから… オレは一体どんだけ眠ってたんだろ? 「ごめん、一番楽してたのに…」 「気にしなくていい。セツには慣れないことばかりで、辛かっただろう?」 しゅんと項垂れると…ルーはベッドの端に腰掛け、オレの頭を優しく撫でてくれるから。 つい顔が綻んでしまう。 「そうだ、お腹は空いてないか?」 「あー…」 ルーに問われ、確かにお腹空いたなぁとは思った。 …けどそれよりもまずは、 「お風呂…入りたい。」 「ははっ…セツは本当に風呂が好きなのだな。」 オレの返事に思わず吹き出すルー。 だってまともに風呂入ってないし、森の中はジメジメしてたからさ… まあ、オレは殆ど歩いてないから、汗はそんな掻いてなかったけども。 それでも多少は汚れるし、着替えだって出来ないから…今は何よりお風呂って気分なんだよね~。 「湯船は無いが、シャワーなら部屋にも備え付けてあるから。」 浴びてくるといい、ルーはそう言って洗面所の方を示す。 「着替えも準備しておくよ。」 「うん、ありがと。」 ルーに手を引かれてベッドから立ち上がり、トコトコとひとりシャワーに向かうのだけど… 「…ルーも一緒に浴びる?」 「っ…!ごほっごほっ…」 一応聞いてみた方が良いかな~…と、入り口からひょこっと顔だけ出してみたら。 ルーは面白いほど盛大に噎せてしまい。 「いやっ…今は大事な時だから…」 咳払いしつつ、丁重にお断りされちゃった。 むー…別に少しくらいイチャイチャしても、バチは当たんないと思うけどなぁ。 まあルーは真面目だからね、言いたいことは解らなくもないし。ちょっとだけ残念に思いながらも、オレはひとりで浴室へと向かった。

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