336 / 423

「はぁ~…久しぶりに生き返った~。」 3日分の汚れを綺麗に落とし。 さっぱりとした身体に、ルーが用意してくれた部屋着へと腕を通す。 そうしてほこほこと、部屋へと戻ると… 「…それは…態とやっているのか、セツ…」 「えっ…?なにが?」 風呂上がりのオレを見るなり、目元を押さえるルーは。赤くなりながら、なんとも悩ましげに溜め息を吐くので。 改めて自身を振り返り、あ~…と察して答える。 「だってさ~、服がおっき過ぎるんだもん。」 ルーが用意してくれたのは、この基地に常駐する騎士さん達が着るための、備え付けの部屋着であり。 屈強な身体の彼らが着るものだから。当然オレなんかより、遥かにオーバーサイズなわけでして。 ズボンはウエストガバガバだし、上着だってブカブカでちょっとしたワンピースかってくらい丈があったもんだから。 風呂上がりで暑いし、もうそれとパンツだけでいいんじゃないかって思ったんだけど…。 「はぁ…セツには警戒心というものが無いのか…」 オレから視線を反らすルーは、心を落ち着かせようと大きく深呼吸をし。 「なんだよ…てか、別に我慢とかしなくても…」 屋敷ではいつもガッついてたクセに…。 なんかモヤっとしたので。 オレはルーに近付くと、わざと抱き付いてやる。 そしたらルーはびくんと肩を揺らして、 「っ…今は、駄目だ…」 「え~…」 なんて拒んで、オレを引き剥がそうとするから。 こっちも段々と意地になって…背中にまで腕を回し、あらがってみせた。 「ルーがしたい時にして良いよって、オレ言ったじゃんか…」 遠慮しないでよって、不貞腐れながら見上げると。 ルーは困り顔で瞑目して…何度目かの溜め息を漏らす。 「私だってセツに触れたい…だが今は、欲に流されている時ではないから…。」 察してくれと、ルーは切なそうに訴えてくるので。ま…仕方ないよね。 「別にいーよ…ちょっとからかっただけだし。」 「なっ…」 今度はルーがムスッとしちゃったけど。 オレだってお預け食らったんだから、おあいこってことで許してもらおう。 「でもさっ、ちゅーぐらいなら…良いだろ…?」 「うむ…それならば、」 うっすら口を開け、じーっと見つめたら。 ルーの顔がゆっくりと近付いてきて。 ふに…と軽く口付けた後、もう深く繋げられている。 「んっ、ふぁっ…」 こんなキスして、ずるいなぁと思いながらも。 今は人目を気にしなくてもいいから、そこは遠慮せず身を任せる。 「セツ…」 「んんっ…ぁ…?」 糸を伸ばし、ゆっくり離れてく唇からプツリと弾けたソレを目に。もっとして欲しいとか、つい後ろ髪を引かれながら。 うっとりとルーの顔を見上げると…同じように熱っぽく見つめ返されて。 「この魔王との一戦を、無事にやり遂げたら…」 真剣でいて、どことなく色艶を纏うルーの瞳に釘付けにされながら。 紡がれる言葉を、待ち侘びる。 「その時は、セツを…抱いても良いだろうか?」 「え…」 欲を包み隠さず晒け出し、オレを捉える緑柱石に。 オレの心臓が一際波打っては…熱を放つ。 「これは私の、覚悟だから…」 本音は今すぐにでも抱きたい。 けれどそれをしてしまったら、甘えてしまいそうだから。 ルーは告げ、オレの手を取り口付ける。 唐突に求められ、少し驚いちゃったけど… 「…いいよ。」 その時はオレの全部をルーにあげるから。 恥じらいながらもはっきり応え、ルーの胸へと擦り寄った。 すると耳元で名前を囁かれるから。 おずおずと顔を上げれば…また深く、唇を奪われる。 「それまでは我慢する、けどさ…」 一緒に寝るくらいは良いよね?…と、背中に回す手でぎゅっと服を掴む。 ルーは苦笑してみせるけど。 その目は今も色を含んだままで…オレの身体を抱き上げ、ベッドへと誘う。 「あ…でもオレ起きたばっかだから、まだ眠くないんだけどね…。」 「ならば、少しだけ…」 そう、少しだけなら。 悪戯に微笑むルーの顔がまた、ゆっくりと寄せられた後。じゃれ合うようなキスと睦言を重ね… 静かな森の夜は、しっとりと更けていった。

ともだちにシェアしよう!