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③
「ん…」
閉じた目蓋越しにも、窓から射し込む陽光が判り…もぞりと身動ぎすると、ぎゅっと身体ごと全部を包み込まれて。
微睡む中、オレの方からもその温もりへと擦り寄れば。額にちゅっとリップ音が聞こえ…。
次にはこめかみ、目蓋や頬にも。柔らかな口付けが幾つも落とされた。
「も、起きなきゃかな…」
ホントはまだこうしてたくて。
未だ目は閉じたまま、ルーの胸に顔を埋める。
するとルーに手櫛で髪を鋤かれて…心地好さにまた、うとうとしてしまう。
「そうだな…大事を取って、出発を明日まで伸ばすみたいだから。セツはゆっくりしていて良いのだが…」
オレが寝落ちして起きなかったのもあってか、ヴィンが気を遣ってくれたようで。
本来ならもう、出発しててもおかしくない時間だったんだけど。体調を考慮し、明日の朝まで出発を遅らせてくれたんだそうな。
その代わり明日以降も、おんぶでの移動が必須条件にはなってしまったが…。
なので騎士団もルー達も、明日の準備があるそうだから。みんなはそうゆっくりもしてらんないんだけど。
オレは特にやることもないので…というか、何もしなくていいから休んでおけってのが…ヴィンからのお達しらしい。
「んっ…」
名残惜しそうな、頬に触れるだけのキスをされて。
ルーはひとり起き上がろうとするんだけど…。
「んー…なら1回だけ、」
キスしてって、ぼんやり眼を少し開いて要求すると。ルーは仕方ないなと笑いつつも唇に、ちゅっと軽いキスをしてくれる。
う~ん…そうじゃなくてさ、
物足りなさにくいと袖を引っ張ったら────
「おっはよ~セツ~!!」
「ちょ…ロロ、いきなり入んねぇ方が────」
バーン!と部屋の扉が豪快に開け放たれ。
朝からハイテンションでやって来たのは、愛らしい笑顔満点のロロであり…。
後ろに続くジーナとバッチリ目が合えば、ほらな…と居心地悪そうに顔を逸らされてしまった。
「あ~!またルーがセツを独り占めしてる~、ズルイズルイっ!」
空気などお構い無しに、ズカズカと駆け寄るロロの姿に。オレはハッと我に返り、ルーから離れるけれど。
「こんなことだろうと思ったんだよ…たく、お前らもイチャつくなら鍵くらい掛けとけよな~。」
教育に悪ィんだよとゴチるジーナは、真っ赤になってそっぽ向いちゃうし。
「違っ…別にイチャイチャなんかっ…」
そこまでヤラシイことはしてないし…ジーナが想像したようなことは、断じてないから!
…とか言い訳してみても、全然信じてくれやしない。
「セツってばルーに恋してから、どんどん綺麗になってくし~…最近は色気もムンムンしてきたから…やっぱりそういうコト、なんだね…。」
「ロロ!?ちょ、かっ勝手に納得しないでっ…!」
ルーとはまだ一応、最後まではシてない…のに。
さすがにそんなことを説明するわけにはいかず、口ごもっていると。
チラリと盗み見たルーが、まさに真顔で口を開こうとしていたので…
「ロロ、私とセツはまだ清い仲────むぐっ…」
「わ~わ~ルーのおバカっ…!お前は何も言わなくていいからっ!」
色々学んだので。
寸でのところで、ルーの口を塞ぎ…難を逃れた。
「まっ、そんだけ元気なら心配なさそうだな~。」
「うう…そりゃもう、ぐっっすり寝てたからねっ!」
誤解は全然解けてないけど、これ以上の悪足掻きはムダに話が拗れるだけだろうし。
朝から疲労感を覚えたオレは説得を諦め、ガックリと肩を落とした。
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