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「ん…」 閉じた目蓋越しにも、窓から射し込む陽光が判り…もぞりと身動ぎすると、ぎゅっと身体ごと全部を包み込まれて。 微睡む中、オレの方からもその温もりへと擦り寄れば。額にちゅっとリップ音が聞こえ…。 次にはこめかみ、目蓋や頬にも。柔らかな口付けが幾つも落とされた。 「も、起きなきゃかな…」 ホントはまだこうしてたくて。 未だ目は閉じたまま、ルーの胸に顔を埋める。 するとルーに手櫛で髪を鋤かれて…心地好さにまた、うとうとしてしまう。 「そうだな…大事を取って、出発を明日まで伸ばすみたいだから。セツはゆっくりしていて良いのだが…」 オレが寝落ちして起きなかったのもあってか、ヴィンが気を遣ってくれたようで。 本来ならもう、出発しててもおかしくない時間だったんだけど。体調を考慮し、明日の朝まで出発を遅らせてくれたんだそうな。 その代わり明日以降も、おんぶでの移動が必須条件にはなってしまったが…。 なので騎士団もルー達も、明日の準備があるそうだから。みんなはそうゆっくりもしてらんないんだけど。 オレは特にやることもないので…というか、何もしなくていいから休んでおけってのが…ヴィンからのお達しらしい。 「んっ…」 名残惜しそうな、頬に触れるだけのキスをされて。 ルーはひとり起き上がろうとするんだけど…。 「んー…なら1回だけ、」 キスしてって、ぼんやり眼を少し開いて要求すると。ルーは仕方ないなと笑いつつも唇に、ちゅっと軽いキスをしてくれる。 う~ん…そうじゃなくてさ、 物足りなさにくいと袖を引っ張ったら──── 「おっはよ~セツ~!!」 「ちょ…ロロ、いきなり入んねぇ方が────」 バーン!と部屋の扉が豪快に開け放たれ。 朝からハイテンションでやって来たのは、愛らしい笑顔満点のロロであり…。 後ろに続くジーナとバッチリ目が合えば、ほらな…と居心地悪そうに顔を逸らされてしまった。 「あ~!またルーがセツを独り占めしてる~、ズルイズルイっ!」 空気などお構い無しに、ズカズカと駆け寄るロロの姿に。オレはハッと我に返り、ルーから離れるけれど。 「こんなことだろうと思ったんだよ…たく、お前らもイチャつくなら鍵くらい掛けとけよな~。」 教育に悪ィんだよとゴチるジーナは、真っ赤になってそっぽ向いちゃうし。 「違っ…別にイチャイチャなんかっ…」 そこまでヤラシイことはしてないし…ジーナが想像したようなことは、断じてないから! …とか言い訳してみても、全然信じてくれやしない。 「セツってばルーに恋してから、どんどん綺麗になってくし~…最近は色気もムンムンしてきたから…やっぱり、なんだね…。」 「ロロ!?ちょ、かっ勝手に納得しないでっ…!」 ルーとはまだ一応、最後まではシてない…のに。 さすがにそんなことを説明するわけにはいかず、口ごもっていると。 チラリと盗み見たルーが、まさに真顔で口を開こうとしていたので… 「ロロ、私とセツはまだ清い仲────むぐっ…」 「わ~わ~ルーのおバカっ…!お前は何も言わなくていいからっ!」 色々学んだので。 寸でのところで、ルーの口を塞ぎ…難を逃れた。 「まっ、そんだけ元気なら心配なさそうだな~。」 「うう…そりゃもう、ぐっっすり寝てたからねっ!」 誤解は全然解けてないけど、これ以上の悪足掻きはムダに話が拗れるだけだろうし。 朝から疲労感を覚えたオレは説得を諦め、ガックリと肩を落とした。

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