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⑥
「えっと…オリバーさんも忙しそうですし、オレはこれで…」
「セツ殿…!」
居たたまれなさに駆られ…逃げるように去ろうとしたら、すぐに呼び止められて。
あからさまドキリとしてしまい、肩が揺れる。
「…今夜、私に…お時間を頂けないでしょうか?」
「え…?」
凛とした声音に、弾かれ振り返ると。
切なく光る瞳とまたぶつかり…
「どうしても貴方に、お伝えしたいことがあるので…。」
揺るがぬそれらに、つい吸い込まれそうになるものの…
(…もう、はっきりさせないきゃダメ…なのかもな…)
彼がオレへと向ける想いが…なんなのか、を。
オリバーさんだからこそ、誤魔化したり適当な事を言ってはいけないと思うから…
「…わかり、ました。」
なんとかして声を絞り出し応じると、彼は安堵したよう小さく息を吐き。
「では…夕食後、この上で…お待ちしております。」
告げてオレが今向かおうとしていた塔を、視線で示すと…オリバーさんは静かに一礼して、足早にこの場を立ち去っていった。
(はあ~…緊張した────…)
脈打つ胸を撫で下ろし、大きく嘆息する。
今夜のことを思うと、落ち着かないけれど…。
(どうしよう…)
ルーには……とりあえず黙っておこうかな…。
もしかしたら、オレの思い過ごしかもしれないんだし。
そうなると、話が余計拗れるだけだから。
結果を見てから話す方が良いのかもしれない。
(でも、)
あんな風に、あんな顔して告げられたら…
そうとしか思えなくって。
正直なところ、気持ちが追い付かなくて戸惑う。
まさかオリバーさんがって…思いも寄らないだろ?ルーに片想いしてた時だって、最初はそうだったんだから。
それで色々あって、あんな遠回りする羽目になっちゃったんだし…。
寧ろオリバーさんみたいな人がオレを、とか…
逆になんで?って、疑問しか浮かばないんだけど…。
「はあ~…」
モヤモヤするのを振り払うべく、空を仰ぎ見る。
オレの心とは裏腹に、そこは一面晴れ渡っており。湿り気を含んだ風が火照った頬を凪いでは、そよりと通り過ぎていく。
ぼんやり遠くを眺めれば柵の向こう、広大な森が鬱蒼と繁っていて。果てのない景色に、逃避してしまいたくなるけれど…。
「ちゃんと、しなきゃ…」
それだけはダメだって解ってるから。
視界は虚ろに、けれど頭の中は忙しなく。
蒼と黄金、ふたりの騎士を思い浮かべながら…
時はいつになく走馬灯のように。あっという間に過ぎていった。
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