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⑪
「…オレ、全然気付いてなかったんだ…」
オリバーさんの気持ちに。
何だか胸がいっぱいいっぱいで、ルーに聞いて欲しくなったから…
オレはぽそりと、独り言のように話す。
「ここ最近になって、もしかしたら…ってのはあったんだけど、さ。」
まさかオリバーさんみたく大人で完璧な人が。
オレなんかをって…思いもよらないだろ?
…まあそれを言ったら、ルーにだって同じことが言えるんだけども。
「セツは鈍いからな。」
「んなっ…!?」
なのにルーはわざとらしく、大袈裟な溜め息を吐いてみせるもんだから。
ムッとなって振り返ったら、じっとオレを捉える瞳とぶつかった。
「…お前は、気付いてたっていうのか?」
「寧ろ気付いてないのは、セツくらいのものだぞ。」
悔しくて言い返すものの、しれっとカウンターを食らわされて。
尻込みすれば、更に畳み掛けられる。
「オリバー殿がセツに向ける好意は、あからさまだったしな…。」
なにより、と…間を置くルーはそこで真顔になり。
「同じ想いとなれば…嫌でも解るものだ。」
それがお前に抱く想いならば。
言ってルーの手は、オレの頬へと伸ばされる。
「オリバー殿に限った話じゃない。セツが気付かないだけで、お前に特別な感情を抱く者は、それこそごまんといるのだから。」
少しは自覚して貰わないと…お前はただでさえ自覚無しに、人を惹き付けて止まないのだから。
「私の気が、休まらないよ。」
「なっ!…る、ルーには言われたくない、しっ…」
説教するみたくズバッと言い切られると、なんだか悔しい。…というか、
「お前…余裕そうだな?なんか吹っ切れたっていうか…」
「そうか?セツが絡むと、つい感情が先行してしまい、自制が効かなくなるのだがな…。」
さらりと答えてるけどさ。
いつもだったら、オリバーさんとこう…ふたりきりで話してる時点で、ヤキモチとか妬いちゃってさ。邪魔なり何なりしてきそうなもんだろ?
なのに…
「さすがに…そんな野暮なことはしないさ。」
大人げないからな、とか。
いやいや…どの口が言ってんだか。
自制出来ないとか言いながら、目の前のルーは至って冷静というか。むしろ、いつにも増して落ち着いてるからさ…逆に違和感あるんですけど?
あ、もしかしたら…
「…オレがオリバーさんの告白を断ったからか?」
「…それは本気で言っているのか?」
だってオリバーさんのこと、ずっと意識してバチバチしてたし。
オレが彼を振ったことで不安も解消されて。
優越感じゃないけど。気持ち的に余裕ができたから…とか、思ったんだけども。
対するルーは心外だとばかりに、ムスッとしてしまった。
「私はただ…セツが、」
“オレにはアイツじゃなきゃダメなんです───”
「あの時セツが言っていた言葉が、嬉しかったから…」
それだけだと、ルーはとても幸せそうに微笑む。
「だから……私を選んでくれて、ありがとう。」
「え…ぁ…」
ズルい、こんな不意打ち。
そんなのオレの方が、お前に言いたいくらいなのに。
感謝を口ずさむルーは、
とても晴れやかな笑顔で以て、告げるから。
「ばか…違う、よ…」
嬉しい、でもそういうのじゃなくてさ。
「どうせ伝えるなら、そんなんじゃなくて…」
もっと最適な言葉があるはずだろ。
恋人ならば、別の…
「ああ、」
真っ赤な顔になりながら、ぶきっちょにも切り出す。
察してくれる恋人は、くすりと苦笑いながらも。
「愛している。」
「…うん、オレも。」
ちゃんとオレを甘やかしてくれるから。
自然と引き寄せられるがままに。
愛おしい人は応えて柔らかな口付けを、交わしてくれるのだ。
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