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②
早朝、日の出よりも前。
目覚めたオレは身仕度をし、急いで食堂へと向かう。
「はよ~セツ。ヴィン達は先に外で待ってるよ。」
一夜明け、冷静になって昨夜のことを振り返れば。今朝はどんな顔して会えばいいのか分からず…やや緊張気味で来たのだけれど。
オリバーさんは既にヴィンやアシュ、騎士さん達と打ち合わせをしているそうで…内心、ホッとしてしまった。
(いやいや、それじゃダメでしょ…)
まず意識するなというのが、無理な話なわけで。
みんなもいるし…オリバーさんだって立場とかあるだろうから。オレが普通に振る舞えなきゃ、すぐ勘づかれちゃいそうなもんだし。
そう思い至り、雑念を払うべく頭 を振っていると…。
「食ったら出発だかんな~、あんま腹一杯食うなよ~セツ。お前はすぐ動けなくなっちまうんだからさ?」
「ううっ…!…解ってるよ~!」
意外と勘が鋭い、というか。単にオレが分かり易い性格なだけかもしんないけど…。
オレのよそよそしさに気付いたのか、ジーナにバシンッと背中を叩かれる。
目が合ったら、アシュみたいにウインクしてくるし…。さすがは守護騎士様、まだ子どもっぽさはあれど、ジーナもかなりの美形だし。
大雑把そうでいて、意外と気配りも利いてるとなれば…将来的に有望そうだよなぁ。
物言いは乱暴だけど、すっごく優しいし。
派手な外見とは裏腹に、真面目で純情なとこあるから。
オレの方が年上なんだけど…
ジーナもホント、頼りになるんだ。
「セツ、私達も急ごう。」
「あ、うんっ!」
ルーに促され、軽めの朝食を急いで頬張り。
胃を休める間もなく、先に行ってしまったジーナとロロ達に次いで、みんなが集う基地の裏門へと急ぐ。
と…
(あっ……)
気まずい…というわけでは、ないのだけれど。
昨日の今日で、多少は仕方ないというか…
オリバーさんの姿を認め、思わずドキリとしてしまう。
「セツ殿。」
ヴィンとアシュ、それからシロエさん達と話し込んでいた彼は。オレに気が付くと真っ直ぐこちらへやって来て…
「おはようございます、お加減は如何ですか?」
極めて爽やかに、にこりと笑顔を向けられ。
思わず拍子抜けさせられて。
「あっあ…と、ちょっと筋肉痛みたいに、なってますけど…全然平気ですっ。」
慌てて挨拶し返すと、オリバーさんはくしゃりと目を細め。眩しいほどのそれに、つい照れが生じてしまう。
「歩くよりはマシなんですけどね…オリバーさんが言ったように、背負われ続けるのも大変だから…」
「はは…同じ体勢なのも、なかなか辛いものがありますからね。」
苦笑うオレに、オリバーさんは小さく吹き出して。なんとなく、だけど…今までとは雰囲気が違うような。より近くに感じるというか。
それは多分、悪い意味ではなくて…
「魔王城まで、まだ少し掛かりますが…もうひと踏ん張りですから。共に頑張りましょう、セツ殿。」
「…はいっ。」
一夜で色々と変わってしまったものはあるから。
今まで通りには、行かないのかもしれない。
だとしてもそれは、前向きに。
より良い関係を築けるんじゃないかって…。
オリバーさんを見ていたら、自然とオレの緊張は解けていった。
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