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早朝、日の出よりも前。 目覚めたオレは身仕度をし、急いで食堂へと向かう。 「はよ~セツ。ヴィン達は先に外で待ってるよ。」 一夜明け、冷静になって昨夜のことを振り返れば。今朝はどんな顔して会えばいいのか分からず…やや緊張気味で来たのだけれど。 オリバーさんは既にヴィンやアシュ、騎士さん達と打ち合わせをしているそうで…内心、ホッとしてしまった。 (いやいや、それじゃダメでしょ…) まず意識するなというのが、無理な話なわけで。 みんなもいるし…オリバーさんだって立場とかあるだろうから。オレが普通に振る舞えなきゃ、すぐ勘づかれちゃいそうなもんだし。 そう思い至り、雑念を払うべく(かぶり)を振っていると…。 「食ったら出発だかんな~、あんま腹一杯食うなよ~セツ。お前はすぐ動けなくなっちまうんだからさ?」 「ううっ…!…解ってるよ~!」 意外と勘が鋭い、というか。単にオレが分かり易い性格なだけかもしんないけど…。 オレのよそよそしさに気付いたのか、ジーナにバシンッと背中を叩かれる。 目が合ったら、アシュみたいにウインクしてくるし…。さすがは守護騎士様、まだ子どもっぽさはあれど、ジーナもかなりの美形だし。 大雑把そうでいて、意外と気配りも利いてるとなれば…将来的に有望そうだよなぁ。 物言いは乱暴だけど、すっごく優しいし。 派手な外見とは裏腹に、真面目で純情なとこあるから。 オレの方が年上なんだけど… ジーナもホント、頼りになるんだ。 「セツ、私達も急ごう。」 「あ、うんっ!」 ルーに促され、軽めの朝食を急いで頬張り。 胃を休める間もなく、先に行ってしまったジーナとロロ達に次いで、みんなが集う基地の裏門へと急ぐ。 と… (あっ……) 気まずい…というわけでは、ないのだけれど。 昨日の今日で、多少は仕方ないというか… オリバーさんの姿を認め、思わずドキリとしてしまう。 「セツ殿。」 ヴィンとアシュ、それからシロエさん達と話し込んでいた彼は。オレに気が付くと真っ直ぐこちらへやって来て… 「おはようございます、お加減は如何ですか?」 極めて爽やかに、にこりと笑顔を向けられ。 思わず拍子抜けさせられて。 「あっあ…と、ちょっと筋肉痛みたいに、なってますけど…全然平気ですっ。」 慌てて挨拶し返すと、オリバーさんはくしゃりと目を細め。眩しいほどのそれに、つい照れが生じてしまう。 「歩くよりはマシなんですけどね…オリバーさんが言ったように、背負われ続けるのも大変だから…」 「はは…同じ体勢なのも、なかなか辛いものがありますからね。」 苦笑うオレに、オリバーさんは小さく吹き出して。なんとなく、だけど…今までとは雰囲気が違うような。より近くに感じるというか。 それは多分、悪い意味ではなくて… 「魔王城まで、まだ少し掛かりますが…もうひと踏ん張りですから。共に頑張りましょう、セツ殿。」 「…はいっ。」 一夜で色々と変わってしまったものはあるから。 今まで通りには、行かないのかもしれない。 だとしてもそれは、前向きに。 より良い関係を築けるんじゃないかって…。 オリバーさんを見ていたら、自然とオレの緊張は解けていった。

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