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「この調子ですと、到着は深夜に及ぶかもしれませんね…。」 オレの体力を考慮し、ヴィンの計らいで出発を1日遅らせたこともあり。 日の出と共に急ぎ基地を立った一行は、例の如くみんながオレを背負うという方法で、少しでも遅れを取り戻そうと先を急いでいた。 「魔物の数が予想以上に多いからな。聖域内ならばと、少し高を括っていた…。」 冷静に状況を見極めるヴィンに、オリバーさんも厳しい表情を浮かべる。 既に進行速度も上げ、みんな駆けるように森の中を進んでいたんだけれど…。 先程オリバーさんが告げたよう、ここに来て魔物との遭遇率が格段に上がってしまい。そうなると、嫌でも足止めを食らう羽目になるから… 現状、手を焼くような驚異的なものではないにしろ。 こうも戦闘が嵩むと、焦りが生じるのも仕方のないことだった。 「魔物の数からすると…魔王城の結界はもう、機能していないのかもしれないね。」 「えっ…?それじゃあ結界は魔族に、壊されちまったってことか?」 アシュが最悪の事態を口にすれば。 ジーナも眉間を潜め、うんざりとばかりに嘆息する。 「確かに…聖域内なのに、神子の力の気配が殆どしないもんね…。」 神淵の森の時は聖域内に足を踏み入れただけで、その感覚がオレでも判ったのに。 これだけ進んでも、それが全く感じられないから… 「覚悟しておいた方が良いだろうな…。」 結界が壊されているならば…魔族達の力も以前より手強くなるということだから。 ルーの言うよう、気を引き締めておくべきなんだろう。 「ならもう少しペース上げていった方が、良いかもね。」 ロロが口元を指でつつきながら提案すると。 照らし合わせたかの如く、みんなが一斉にオレの方を振り返り。 「ベル、行けるか?」 「俺なら平気っすよ。」 オリバーさんがオレを背負うベルさんへ問うと、彼は不敵に笑いながら親指を立ててみせた。 「ごめんね、ベルさん。」 「いえいえ、こんくらい余裕っすから。」 するとタイミングよく、魔物が現れ。 「ベル殿はセツの守護に徹して下さい、前進しながら各個撃破して行きますよ!」 ヴィンが指示を飛ばし、皆が陣形を保ちながら剣を抜く。 「セツ殿、しっかり掴まってて下さいよ!」 「う、うんっ…!」 叫びベルさんが駆け出し、オレは慌てて彼にしがみつく。 ヴィンとジーナを先頭に、オレ達の前後をルー達が守備を固め…全員が颯爽と森の中を突き進んだ。

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