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⑤
『ガアアアァ…!!』
獣の姿をしたものや、巨大な蝙蝠のような魔物が四方から襲い掛かかり。それらを仕留めながら前進する。
歩きにくそうな、ぬかるんだ道をオレが全速力で走るよりも遥かに速く駆け抜け。不意打ちに現れる敵をも瞬時に把握し、捩じ伏せていく。
しかもベルさんはオレを背負っていてなお、遅れをとることなく。時には魔法で魔族を退けたりしてるわけだから…。騎士の力量は計り知れない。
「くっそッ…まだ来んのかよっ…!」
「シロエ後ろ!今度は油断するなよ…!」
脇道からも新手の魔物が飛び出し、シロエさんが舌打ちすると。すかさずカナタさんが援護に入り、陣の乱れを正す。
「怯まず進め!止まってしまえば堂々巡りだ…!」
『了解!』
オリバーさんが檄を飛ばせば、ふたりの顔付きも一層引き締まり。順応して魔物を撃破していく。
そうして皆が隊列を崩すことなく、敵を倒しながら疾走していく様は…見ていて圧巻としか言いようがなかった。
「セツを狙ってきているぞ…!」
常にオレの傍で戦うルーが叫ぶ。
魔物は無差別に攻撃しているように見えるものの…
明らかに、この中で一番弱く足手纏いであろうオレを、意図的に狙い始めており。
もしかしたら本能的な何かで、オレが神子であると判断し…排除しようとしているのかもしれない。
「うぁッ…」
「セツ殿…もう少しだけ我慢して下さいよっ!」
ヴィンの指示で更に加速し、不利な状況を作らぬよう立ち回って、敵を蹴散らしていく。
万が一この状況が魔王城まで続いてしまえば。
いくら屈強な騎士と云えど、体力が持たないんじゃないかって心配になるのだけど…。
「ベルっ後ろだ…!」
後方を守るオリバーさんが叫び、声に弾かれ振り返ると…。
蝙蝠型の魔物が僅かな隙を狙い、オレへと突撃してくるのが見えて。反射的に目を瞑り身構える。
「チッ…!」
同時に反応するベルさんは、咄嗟に身体を反転して狙いを反らし…
「ああっ…!」
オレへの直撃は免れたものの、完全には回避出来ず…代わりに彼の腕から、鮮血が筋を描いて飛び散った。
「ベルさんッ…!!」
「かすり傷です!」
魔物に腕を引き裂かれながらも、彼は至って冷静に。その魔物を火球で仕留め、止まることなく加速する。
腕の傷は気になるけれど…
まだまだ魔物は、押し寄せて来てるものだから。
今は無事を祈り、彼らに託すしかなかった。
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