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『ガアアアァ…!!』 獣の姿をしたものや、巨大な蝙蝠のような魔物が四方から襲い掛かかり。それらを仕留めながら前進する。 歩きにくそうな、ぬかるんだ道をオレが全速力で走るよりも遥かに速く駆け抜け。不意打ちに現れる敵をも瞬時に把握し、捩じ伏せていく。 しかもベルさんはオレを背負っていてなお、遅れをとることなく。時には魔法で魔族を退けたりしてるわけだから…。騎士の力量は計り知れない。 「くっそッ…まだ来んのかよっ…!」 「シロエ後ろ!今度は油断するなよ…!」 脇道からも新手の魔物が飛び出し、シロエさんが舌打ちすると。すかさずカナタさんが援護に入り、陣の乱れを正す。 「怯まず進め!止まってしまえば堂々巡りだ…!」 『了解!』 オリバーさんが檄を飛ばせば、ふたりの顔付きも一層引き締まり。順応して魔物を撃破していく。 そうして皆が隊列を崩すことなく、敵を倒しながら疾走していく様は…見ていて圧巻としか言いようがなかった。 「セツを狙ってきているぞ…!」 常にオレの傍で戦うルーが叫ぶ。 魔物は無差別に攻撃しているように見えるものの… 明らかに、この中で一番弱く足手纏いであろうオレを、意図的に狙い始めており。 もしかしたら本能的な何かで、オレが神子であると判断し…排除しようとしているのかもしれない。 「うぁッ…」 「セツ殿…もう少しだけ我慢して下さいよっ!」 ヴィンの指示で更に加速し、不利な状況を作らぬよう立ち回って、敵を蹴散らしていく。 万が一この状況が魔王城まで続いてしまえば。 いくら屈強な騎士と云えど、体力が持たないんじゃないかって心配になるのだけど…。 「ベルっ後ろだ…!」 後方を守るオリバーさんが叫び、声に弾かれ振り返ると…。 蝙蝠型の魔物が僅かな隙を狙い、オレへと突撃してくるのが見えて。反射的に目を瞑り身構える。 「チッ…!」 同時に反応するベルさんは、咄嗟に身体を反転して狙いを反らし… 「ああっ…!」 オレへの直撃は免れたものの、完全には回避出来ず…代わりに彼の腕から、鮮血が筋を描いて飛び散った。 「ベルさんッ…!!」 「かすり傷です!」 魔物に腕を引き裂かれながらも、彼は至って冷静に。その魔物を火球で仕留め、止まることなく加速する。 腕の傷は気になるけれど… まだまだ魔物は、押し寄せて来てるものだから。 今は無事を祈り、彼らに託すしかなかった。

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