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⑦
「あれが、魔王城…」
まるで侵入者であるオレ達を、排除せしめようと意思を持っているかのように。
魔物は次々と襲い掛かり…それでもなんとか被害は最小限に、終着点である魔王城跡へと到着したのも束の間。
ほぼ丸2日、激走と激闘を繰り返してきた騎士達は皆、一様に大きな嘆息を吐き出す。
「無事、期限内には着いたけどね…」
アシュが嘆息するのも無理はない。
ラルゴが指定していたのは1ヶ月後のまさに今日…
しかし陽は随分前に落ちきり既に深夜。
むしろ残り2時間ほどで、タイムリミットになるという時刻だった。
「余力はまだあるが…万全で挑めぬのは痛いな…。」
疲労が見て取れる騎士達を省みて、オリバーさんも奥歯を噛み締める。
食事も休息もほどほどに、あれだけの距離を走り抜き魔物の相手までして。まだ余力が残ってるだなんて、凄いとは思う。
しかしオレから見ても、みんなが疲れているのは一目瞭然だったから。ここで少しでも休めるなら、良かったんだけど…。
「ごめんなさい…オレのために出発を一日、遅らせたりしたから…」
オリバーさんがいうように、相手は魔族の王とその仲間だ。戦うならばベストな状態でなきゃ、ちょっとしたことが命取りになりかねないっていうのに…。
ついルーの時のことが頭を過り、身体が震える。
そんなオレを見つめていたルーは、優しく労るよう肩を撫でてくれて。
「セツこそ万全でなければ、こうして全員無事ではいられなかったんだ。違うか?」
「あっ…」
ルーが諭すよう告げ、目配せする。
と…オレを見守るみんなの姿に気付かされて。
毒に倒れたシロエさんや、怪我を負ったベルさん…他の騎士さん達も一様にして。オレに温かな笑顔を向けてくれており。ルーの言葉に賛同するよう、頷いてくれてる。
それにはものスゴく救われるのだけれど…
だからといって、この最悪な状況が覆るわけでもなく。
こうしてる間にも、時間は刻一刻と迫っているから…
「魔王なら、どうせ“王の間”だろ?ならオレが先に偵察してきた方がいいんじゃ…」
ふとジーナが、場の空気を変えるような提案を申し出てみるも。ヴィンの表情は固くそれを否定して。
「いえ…さすがに単体ではリスクが高過ぎますし。慎重に行動すべきかと。」
「うん…どうせ城内へは僕達だけでしか挑めないからね。退路も確保しておかないとだし、限られた戦力を分散させるのは…ちょっと危険かもね。」
ヴィンの意見にアシュも従って頷き。
守護騎士とオリバーさん、団長クラスの騎士さん達は限られた時間の中でそれぞれ意見を出し合う。
オレも本来なら神子の立場で、話の輪に入るべきなのかもしれないけど…。
不慣れな素人が口を挟めるような空気ではなく、聞いたところで内容はちんぷんかんぷん。全くついていける気がしないので…。
その場に座り込んで、雰囲気だけ聞き耳を立てていたのだが…
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