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⑧
「セツ殿は疲れてないッスか?」
そんなオレを気遣い、シロエさんがいつもの陽気さで声を掛けてくれて。
空元気を奮う気力すらないオレは、精一杯の苦笑いで返す。
「さすがにね、ちょっとキツイよね…。」
オレが走ってたわけでも、戦ったわけでもないし…そこまで重傷を負った人もいなかったから。
治癒の方も、大した負担にはならなかったんだけど。それでも元々体力の無い、ごく普通の人間にとっては、余りに過酷なわけで…。
空腹よりも今は、地べたでも良いから。
すぐにでも寝たいくらいに、疲弊してるのが現状だった。
「そうッスよね~俺達だって、そこそこヘバってますもん。」
エヘヘと笑いながら頭を掻くシロエさん。
いつもなら、この辺でベルさんがツッコミを入れそうなものだけど。今はそれもなく…。
きっとそれはシロエさんが、オレを励まそうとしてるのが解ってるから…なんだろうなぁ。
「敵の数も出方も判りませんし…時間を考えれば、今すぐ動くべきなのでしょうが…」
「しかしヴィン、我々はそれで構わないが…セツには多少なりとも休息が必要ではないのか?」
ルーの口からオレの名が出たのに気付き。
話し合いの輪へと視線を戻せば、ちらと目が合わさって。
オレもつい目で追いがちだけど…ルーも結構見てくるよねと、つい顔が緩む。
「ならセツ抜きにして、先にボクらだけで行ってさ。交渉してみるのはどうかな?ラルゴなら事情を説明すれば、ちょっとくらい融通してくれそうだし…。」
ロロも幼く見えて、守護騎士に選ばれるほどの実力者。年長組やオリバーさん、騎士団長さん達と対等に意見を口にするけれど…。
「確かにラルゴならば、説得の余地はありそうだが。他にも新手の魔族がいるかもしれないし…。あの双子やティンカという魔族が出てくれば、厳しいかもしれないな。」
オリバーさんに不安要素を指摘されてしまい、ロロの提案は流されてしまいそうだったが───
「その心配はねぇよ。」
『!!』
突如、魔王城の方から声が響き渡り…全員が身構える。
「おっと、今は丸腰だぜ?」
にわかに殺気立つ騎士達を前に、闇夜に紛れ姿を現した大柄の人影は…すかさず両手を上げてみせた。
「ラルゴ…」
本人が主張したよう、いつも携えている巨大な戦斧は所持しておらず。
…だからといって油断の出来る相手では、ないのだけれど…。
「貴様、何をっ…」
「待って!!みんなもっ…武器を、納めてくれませんか?」
剣を抜いて構える騎士団長さんを制し、オレはラルゴの方へ一歩進み出る。
目が合ったルー達に無言で訴えたら…意図を汲み取ってくれたのか、すぐさま柄から手を離してくれて。
それを目の当たりにした他の騎士さん達もまた、戸惑いつつも武器を納めてくれた。
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