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⑩
魔族側、ラルゴの提案を受け…休息のための猶予を得たオレ達。
まだ余力はあるとは云えど、疲労は確実に蓄積されていたし…正直なところラルゴが来なかったら、かなり不利な状況に陥っていたと思う。
魔族は好戦的で、野蛮な種族だと教わったけれど。
他所から来たオレからすれば、人間にしてもそういう輩は存在するし。それは魔族に限った話じゃないというか…。
魔族とのしがらみも。こんな乱暴なやり方以外にも、何か解決する方法があったんじゃないかなって。
今更だけど…なんだか悔しさみたいなものを、感じずにはいられなかった。
とにかく、今は身体を休めることを第一に。
騎士団は城門前へと陣を置き、周辺の見張りをしながら交代で食事や仮眠を取っていく。
無論、守護騎士とてその立場は同じ…
ルー達も当然、そのつもりでいたようだけど。
城内に入れるのはオレ達だけなので。
見張りは自分達に任せ、ここはゆっくり休むようにと…騎士さん達が気遣ってくれたみたいだ。
「ルー、ちょっといい…?」
明日はいよいよ魔王城に突入。
この時ばかりはロロやジーナも、真剣な顔つきでヴィン達と話したり。各々の武器などを入念に点検したりと…程よい緊張感に包まれていた。
そんな中、オレは意を決し…ルーへと声を掛ける。
「何か込み入った話かい?余り離れない方が良いとは思うけど…」
若干急かすよう腕を引くオレを見上げ、すぐさま立ち上がるルーファス。
と…気付いたアシュから、遠慮がちにそう告げられて…
「大丈夫、すぐそこで話すから。」
答えてみんなや騎士団が寛ぐ輪から少し離れた、静かな場所へと向かう。
といっても、遠目にはみんなの姿が見えているし…辺りには見張り中の騎士さんもいるだろうから。
非常時だし、こればっかりは仕方ないよね。
「どうしたんだ、セツ…何か気になる事でもあったか?」
頃合いをみて、ルーの方から問われ。
背を向けていたオレは、しばらく思い悩んだ末…
ゆっくり振り返ると、おずおずと口を開いた。
「えっと、その…いよいよ、だね…。」
「ん?…ああ、そうだな…。」
どう切り出そうかと、慎重になるオレに。
ルーは別段急かすこともなく、穏やかに応じる。
ひとり緊張する中、上手く気持ちが纏まらず…しどろもどろにはなってしまうけど。
遠目から届くみんなの談笑と、闇夜を照らす一筋の月明かりが…少しだけ、オレの心を落ち着かせてくれた。
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