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⑫
『おお…』
眩く光っていたオレの身体から、唇を伝って伝染し。ルーの身体が輝き始める。
まさに奇跡のような、その光景に。
目を奪われた騎士達は思わず息を飲み込んだ。
「目…開けていーよ。」
「セツ…」
己の身に起きた変化が解るのか…
ルーは言葉を失い、光る自身の手を見つめる。
「これは光の…いや、」
ルーが主に扱える属性は、風と水。
新たに得た力は、一見すると光属性に思えたが…。
「強いて言うなら神子の魔法、かな。実はオレにもよく解んないんだけど…。」
自信なさげに伝えたら、ルーは再度両手を見返して。
「確かに…セツと同じものを感じるな…。」
独り言のように呟いたルーは、なんだか嬉しそうに微笑むから。オレも安堵して、無意識に顔を綻ばせた。
「へへ…ちゃんと出来て良かったよ。」
加護を与えるためとはいえ、かなり恥ずかしいことばっか言っちゃったし。
照れ隠しにおどけたよう笑うと…
「セツ…!」
「おわっ…!?ちょ、ルー…」
いきなり抱き締められ、ドキリとする。
「どしたのっ、急に…」
「いや…セツは本当に、神子なのだな…。」
まだ頼りないとは思うけどね。
今更なんだよって、思わず苦笑が漏れる。
…と、次には肩を抱かれたまま、うっとりとした表情で見つめられるので…。
急に心臓が忙しくなって、敵わない。
「私の神子は儚げで美しく、時に勇敢で……何よりも、愛おしく思うよ。」
「ッ……!」
さらりと紡がれる、こそばゆい囁きに。
五感全てが真っ赤に染まり、狂わされそうになる。
「この力はフェレスティナの為…そしてセツ、お前を守護する為に奮うことを、」
改めて誓う───宣言するなり、ルーが顔を近付けてくるから。目を閉じ、甘んじてそれを受け入れる。
なんだか結婚式の、誓いのキスみたいだなぁとか思ってたら…
「見せつけてくれるじゃねぇか~!」
「セツ、とりあえずおめでとう~!あ、ルーもね~!」
ジーナとロロを筆頭に、騎士さん達からも拍手喝采が沸き起こり。
一気に現実へと引き戻されるけれど…。
「ルーファス~!俺達の分までセツ殿を頼んだぞ~!」
「恋人の前じゃ、絶対負けられねぇもんな~!」
それは決して冷やかしなんかじゃなく。
騎士さん達なりの、激励の声であって。
「今のは、どういった魔法なのですか?是非とも詳しくお訊きしたいのですが───」
「えっ…や、ヴィン、これはそのっ…」
知的探求心に駆られるヴィンにはタジタジ…
そんな彼の後ろ、少し遠巻きに見守るアシュとオリバーさんは優しく笑んでいたから。
「これは神子が、愛する者にだけ与えるという加護の力らしいのだが…」
「わ~わ~!ちょっ、やめてよルー…!!」
あれだけ緊張感に呑まれていた、決戦前夜は。
なんだか場違いなくらいに…とても和やかに、過ぎていくのだった。
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