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『おお…』 眩く光っていたオレの身体から、唇を伝って伝染し。ルーの身体が輝き始める。 まさに奇跡のような、その光景に。 目を奪われた騎士達は思わず息を飲み込んだ。 「目…開けていーよ。」 「セツ…」 己の身に起きた変化が解るのか… ルーは言葉を失い、光る自身の手を見つめる。 「これは光の…いや、」 ルーが主に扱える属性は、風と水。 新たに得た力は、一見すると光属性に思えたが…。 「強いて言うなら神子の魔法、かな。実はオレにもよく解んないんだけど…。」 自信なさげに伝えたら、ルーは再度両手を見返して。 「確かに…セツと同じものを感じるな…。」 独り言のように呟いたルーは、なんだか嬉しそうに微笑むから。オレも安堵して、無意識に顔を綻ばせた。 「へへ…ちゃんと出来て良かったよ。」 加護を与えるためとはいえ、かなり恥ずかしいことばっか言っちゃったし。 照れ隠しにおどけたよう笑うと… 「セツ…!」 「おわっ…!?ちょ、ルー…」 いきなり抱き締められ、ドキリとする。 「どしたのっ、急に…」 「いや…セツは本当に、神子なのだな…。」 まだ頼りないとは思うけどね。 今更なんだよって、思わず苦笑が漏れる。 …と、次には肩を抱かれたまま、うっとりとした表情で見つめられるので…。 急に心臓が忙しくなって、敵わない。 「私の神子は儚げで美しく、時に勇敢で……何よりも、愛おしく思うよ。」 「ッ……!」 さらりと紡がれる、こそばゆい囁きに。 五感全てが真っ赤に染まり、狂わされそうになる。 「この力はフェレスティナの為…そしてセツ、お前を守護する為に奮うことを、」 改めて誓う───宣言するなり、ルーが顔を近付けてくるから。目を閉じ、甘んじてそれを受け入れる。 なんだか結婚式の、誓いのキスみたいだなぁとか思ってたら… 「見せつけてくれるじゃねぇか~!」 「セツ、とりあえずおめでとう~!あ、ルーもね~!」 ジーナとロロを筆頭に、騎士さん達からも拍手喝采が沸き起こり。 一気に現実へと引き戻されるけれど…。 「ルーファス~!俺達の分までセツ殿を頼んだぞ~!」 「恋人の前じゃ、絶対負けられねぇもんな~!」 それは決して冷やかしなんかじゃなく。 騎士さん達なりの、激励の声であって。 「今のは、どういった魔法なのですか?是非とも詳しくお訊きしたいのですが───」 「えっ…や、ヴィン、これはそのっ…」 知的探求心に駆られるヴィンにはタジタジ… そんな彼の後ろ、少し遠巻きに見守るアシュとオリバーさんは優しく笑んでいたから。 「これは神子が、愛する者にだけ与えるという加護の力らしいのだが…」 「わ~わ~!ちょっ、やめてよルー…!!」 あれだけ緊張感に呑まれていた、決戦前夜は。 なんだか場違いなくらいに…とても和やかに、過ぎていくのだった。

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