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「…行こう、セツ。」 「う、うんっ…」 後ろ髪を引かれながらも… ルーに背を押され、城の方へと向き直る。 今は止まっている場合ではないから。 ヴィン達を信じて、オレは先へ進まなくちゃ…。 「神子を逃がすな!ここで始末しちまえば、こっちのモンだぞ!」 ルーにアシュ、オリバーさんとシロエさん達に囲まれるようにしながら、城を目指す。 距離的には数百メートル位だろうか。 小走りに駆け出したオレ達に向けて、魔族らは狂気に満ちた目でオレを指し示した。 「俺が神子を殺して、魔族の王になってやるよ!」 「アレは…ラルゴと違って話が通じなさそうだねぇ。」 神子を前に荒ぶる魔族に対し、アシュは冷ややかに笑う。 雰囲気からして、あの魔族達は寄せ集め。 そもそもジーク達とは仲間…というわけでもなさそうだ。 だからきっと、遠慮なんてしてこないだろうから… 「やれるものなら、やってみろ…!セツには指一本たりとも、触れさせはしない!」 オレの足並みに合わせながら、少し前を行くルーが剣を抜き放ち激昂する。 隣にいるアシュも守護魔法を展開し、それをオレへと発動させた。すると身体が、柔らかな金色の光りに包まれていく。 『ギィアアアァッ…!!!』 「人間風情が、調子に乗るなよ!」 城のバルコニーに佇む魔族達が、杖を振りかざすと。 進路を塞ぐよう、魔物が壁となって立ち塞がり。 城壁を囲んでいた魔物達も、それを打ち破って庭園へと侵入を開始した。 騎士達もヴィンや団長の指揮のもと、散開して敵を迎え討つ。 「今度こそ…殺してやる!」 「はっ…吠え面かかせてやるよ。」 庭園の左側、拓けた場所へとコナーが駆け出すと。ジーナも同じ方向へと疾走し、瞬く間に距離を詰めていく。 すかさずコナーは拳を繰り出したが…ジーナは高く跳躍してこれを躱し。転じて素早く蹴りをお見舞いしてみせた。 それをコナーは反対の手で相殺し。 鈍い音を立て互いに衝突したかと思えば、双方後ろへと下がって距離を取り… 二連三連とまた追撃に転じる。 対峙するふたりは、共に笑みを浮かべており… まだまだ序盤戦、どちらにも余裕の色が伺えた。 「キミは魔法専門じゃないの?」 一方此方は魔法を得意とするルナーと、彼に対峙するロロ。 少し離れた位置で肉弾戦を展開するジーナ達とは真逆に。一定の距離を保ち、相手の出方を見計らう。 「心配には及ばないよ。」 不敵に返すルナーはニヤリと笑むと、細身の杖の先がハンマーのような武器を前に掲げて。 何かしらの術を発動させると、それを自身へと付与させていった。 しばらくすれば、少年の身体は灰がかった光を纏い出し… 「強化魔法か…なら手加減しなくても良さそうだね。」 ロロも敢えてコナーを真似るようメイスを構え、その身体に暖色の光を纏わせる。 魔力の質からして、その魔法はアシュが良く使っている地属性の強化魔法だろうか。 挑発的なロロの行動を尻目に、蔑んだ視線を向けるルナー。しばらく睨み合った後、彼らもまた弾丸のように駆け出した。

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